以前のコラムで評判がよかったのが「経営幹部育成7カ条」でした。

その中で質問をいただいたのが「社長の経営理念・ビジョンを理解し、共感する」ためにはどうしたらいいのか?というものでした。

ご質問のように、この点が経営幹部を育成する大きなポイントの1つです。
社長と経営幹部のベクトルが同じ方向に向かうことで、会社は強い組織になっていきます。

社長が考えた経営理念を文字面だけで理解したつもりになっても、それは理解したことにはなりません。

どのような理由で、どのような想いから社長が経営理念を考え出したのか、社長の価値観を理解して、はじめて経営理念を理解したといえます。

経済が成長をしているときには、やるべきことをやっていれば企業は成長できました。社長・経営幹部・社員の価値観もほぼ同じようなものでした。

しかし、低成長の時代を迎えた現在では、経営幹部も社員も価値観は多種多様になっています。

民間企業は売上と利益は必要だからという理由で、売上目標やそれを実行する戦略だけでは、経営幹部として組織を引っ張って行くことは困難です。

なぜその戦略を実行するのか、それを実行するとどんな会社になっていくのか、そのベースとなる企業理念が出来た背景まで理解しないと本質を見失うことになります。

そのためにはまず、社長が胸襟を開いて自身の想いを経営幹部に伝えなければなりません。かっこいい言葉はいりません。

「小学生の頃はいじめられっ子だった。だから見返したい、そんな想いがある」

「小さいときに貧乏だった。苦労をかけた母親を幸せにしたい」

こんなコンプレックスやネガティブな気持ちも含めて、本音で企業理念を考えた背景を経営幹部に伝えます。

社長自身の弱みをみせることも、気持ちを一つにするためには必要なのです。

経営幹部も社長の意見に疑問があれば、理解できるまで聞くべきです。

そして、経営幹部も自身の生い立ちから現在に至るまでの想いや考え方、どんな気持ちで仕事をしているのかを率直に話してもらいます。

そこで価値観がぶつかり合うこともありますが、それを避けていたら互いが理解し合えるはずがありません。

価値観がぶつかり合うからこそ、そこに気づきが生まれます。
それは、本音でぶつかったからなのです。
気づきがあって、人間は変わることができます。

信頼関係を築くことは、お互いの良いも悪いも含めて理解することなのです。
これでこそ良好なコミュニケーションが取れているといえます。

しかし、社長と経営幹部が経営理念を本当の意味で共通理解をするためには、通常の業務内で行う事は簡単なことではありません。

それを可能にするために、私どもがおすすめしているのが「経営幹部合宿」です。

通常の業務からも離れ、会社からも離れた場所で、いつもと違う環境で行うことで、本音が出やすくもなります。

合宿は、時間もお金も掛かりますから、非効率にみえてもしまうかもしれませんが、社長と経営幹部の意思統一ができいるとても大切で必要な時間なのです。

いくら戦略・戦術だけをかえても、経営幹部の価値観が社長と一致していなければ、効果は限定的になってしまいます。

経営幹部の思考や価値観を理解しなければ、会社や社長の価値観が共有されることはありません。

やはり、個人の価値観まで意識して運営している会社は、強いのです。

でも、これを行っている会社は多くはありません、

なにより、価値観は、言葉に反映され、言葉は行動とし表現されます。
社長や経営幹部の言動は、価値観に反映されていることを部下は見抜いています。

個人の価値観の領域まで踏み込んで、研修や教育をしている会社は、強いのです。