クレームを受けるのは、誰だっていい気持ちはしません。

お客様からのクレームは、商品開発やサービスレベルのアップに繋がるものだとはわかっていても気分は憂鬱です。

できることならクレーム対応はしたくないのが本音でしょう。

しかし、クレーム対策をすると同時に、心理的安全性も同時に高めた会社があります。
その会社の実例を紹介します。

クレームを隠したくなる3つの理由

ある日顧客からクレームがありました。 クレームは上司に報告をしないといけないのですが、上司には知られたくないと思い、なんとか自分だけで処理しようと考えた店長がいました。

しかし、店長が上手くクレームに対応できれば良いのですが、万が一対応を間違えてしまえば、火に油を注ぐことになってしまい顧客の怒りを激しくしてしまいます。

こうなってしまっては、店長一人でクレーム処理ができなくなってしまう恐れもあるのです。

それでも店長一人で解決しようとする原因として考えられるのが3つあります。

1.店長の自己保身

クレームを報告したら叱られる、評価が下がってしまうと考えていれば、店長が自分だけで処理をしようとします。

上手く処理できれば、上司に報告しなくてもよく、叱られることもなければ、評価が下がることもありません。

自己保身のために、自分一人で処理しようと考えても仕方がありません。

2.組織の文化

店長が自己保身に走ってしまう原因として組織の問題もあります。

計画通り、指示通りに出来ていないとき、ミスをしたときには、従業員を叱って組織運営をしてきた文化があれば、店長は叱られたくないので、クレームやミスは隠そうとします。

3.クレーム対応の不明確さ

クレーム対応のルールが明確でないことも、上司に報告しづらい要因の一つです。

クレームは、軽微なものから会社の存亡に関わる重大なことまであります。

それぞれのケースにおいて、どのように処理をするのかをルール化していかないと、クレームを本部に伝えても対応してもらえず、直接の窓口である店長が対応せざるを得なくなります。

会社が抱える2つの問題点

結局、この店長がクレームを一人で抱えたことによって顧客が不信感をもち、大きなクレームとなって本部に伝わることになりました。

クレームが本部に上がってこない組織風土にに危機感を持った社長から弊社にご相談をいただきました。 社長や経営幹部、店長にインタビューをしていくと、様々な問題点が見えてきました。

1.個人でのクレーム対応

複数店舗を運営するこの会社では、クレーム対応についても一通りのマニュアルのようなものはありました。

しかし、クレーム対応に関しては店長の判断に任せている部分が多く、店長によって対応が様々で、ときに店側の責任逃れのような対応で顧客を怒らせてしまうこともありました。


モンスタークレーマーのいわれなきクレームを除けば、クレームが発生するということは、商品や接客、サービスなど何らかの改善点があることになります。

クレーム謝罪

クレームに正しく対応をして、改善をするためには全社的に取り組んでいく必要があります。

2.できて当たり前の組織文化

また、クレームを報告しにくい組織風土でもありました。

店長なんだから、クレーム対応はできて当たり前、指示されたことはやって当然。

ミスをしたり、クレームの処理が上手くできなければ、叱責したり、評価を下げたりして、店長に仕事をさせていました。

これでは店長は萎縮してしまい、やる気は起きません。
また、店長が本来持っている能力も発揮できません。

できたことは評価し、よいことも悪いことも正しく伝えられる心理的安全性の高い職場にしていく必要があります。

クレーム対策プロジェクト発足

クレームを店長個人に任せるのではなく、組織として対応するためのクレーム対策マニュアルを作ることにしました。

社長は、クレーム対策マニュアル作成とともに、組織文化を変えたいとも考えていました。

そこで私どもで提案したのが、クレーム対策プロジェクトです。

社長、本部スタッフ、選抜された店長が集まって、クレーム対応について話し合ってクレーム対策マニュアルを作ることです。

クレーム対策プロジェクトの目的

クレームの窓口になるのは店舗であり、店長です。
直接クレームの対応をしている店長の意見を反映させることが、マニュアルの成否を握ります。

また、店長たちが考えてコミットしたことは、店長たちは必ず実行をします。

プロジェクトに参加しない店長からも、クレーム対応と組織文化について意見を求めた上でプロジェクトを進めていき、内容は全店長に報告することにしました。

この方法であれば、この方法であれば、全店長の意見を反映させやすくなります。

クレーム対策プロジェクトの目的は

1.全店長がクレームに対する意見を反映させること

2.クレームを報告しやすい組織風土にすること

3.過去のクレーム事例を分析して、改善点を見つけること

4.クレーム対応を会社としてルール化すること

5.クレームを会社の発展と業績向上につなげていくこと

6.クレームのお客様を会社のファンにすること

以上の6つでした。

コミュニケーションワークショップ

このプロジェクトで心がけたのは、社長や本部スタッフが店長の意見を否定せず全て受け入れ、店長が発言しやすい組織風土にしていくためのキッカケをつくることです。

もう一つ重要なことは、誰が悪い、彼が悪いと個人攻撃を絶対にしないことです。
大切なのは会社として、新しい仕組みを作りあげていくためですから。

話を聞く、個人攻撃はしない、ことは心理的安全性を高めるための基礎となります。

人は話すときに情報を省略したり、歪曲したり、一般化したりして真意が伝わらないことが多くあり、このことがコミュニケーションを阻害しています。

これを解決するために、クレーム対策プロジェクトの一環として、コミュニケーションのワークショップを開催しました。

心理的安全性

内容は、話し手の真意を探り出すワークショップ、傾聴のワークショップなどです。 ワークショップを行ったことで、これまでの思考や言葉が変化しました。

クレーム対策プロジェクトの内容

その後のクレーム対策プロジェクトでは、店長が顧客として経験した腹の立ったクレーム対応と非常に素晴らしかった対応を話し合ってもらいました。

他店の事なので随分盛り上がり、活発な意見交換ができるとともに、クレームに対しての各店長・各スタッフの考え方が理解できます。

その後に、自社における過去にあったクレームについて検討します。

軽微なクレームか、それとも生命身体や会社の存続に関するクレームなのか、クレームのレベルとその時の対応方法と共有化についても検討をしました。

さらに、クレームが起きたことは不問にし、クレームを報告しないことに対して評価を下げることが決定されました。

その結果、クレームの軽重や種類によって、担当する職位と対応方法、全社的に共有する方法が「クレーム対策マニュアル」として完成をしたのです。

まとめ

クレーム対策プロジェクトに参加した店長からは

・クレームがあっても安心して対応ができるようになった。

・他の店長・本部スタッフ・経営幹部の考え方がわかり、組織内のコミュニケーションが良くなった。

・クレーム対策マニュアルは、これで完成ではなく改善をし続けるシクミができた。

・悪いことでも報告しやすい雰囲気になってきた

などといった感想も出てきており、クレーム対応を考えたことが、組織風土を変化させ、心理的安全性が高くなりました。

プロジェクトを立ち上げて課題を解決することは、心理的安全性を高くするためにも非常に有効な方法なのです。