よく練られた経営戦略があっても、その経営戦略に掲げた経営目標が達成できない会社があります。
一方で、経営目標をきっちりと達成している会社もあります。
経済的環境や市場動向も無関係とは言えませんが、同業種であればどの会社も条件は同じです。
では、経営目標を達成した会社と出来ない会社の違いはどこにあるのでしょうか?
ある成熟市場で戦っている会社がありました。
成熟した市場においては、新しい付加価値をつけて成長の機会を見いだすことが難しい状況です。
事実、売上はほぼ前年並であり、利益は低下していました。
過去の実績を分析してみると、売上の少ない取引先やコストや手間の掛かる取引先が収益性を下げていることがわかったのです。
そこで、経営計画では、優良顧客を重要な顧客と捉えて緊密な関係を構築し、売上・利益を伸ばして行くことを第一目標としました。
収益性の低い取引先については、収益性が改善されなければ取引を停止することもやむを得ないと考えたのです。
取引停止での売上減以上の売上・利益を得るために、現在取り扱っている商品とのシナジー効果がある新商品を優良顧客にクロスセルする方針も決まりました。
新商品を武器に新規取引先を開拓し、優良顧客に育てることを第二の目標として掲げました。
経営計画は全社員に発表され、新しい経営計画がスタートしました。
ところが、経営計画を発表しただけでは、社長をはじめ経営幹部が思うような動きを社員がしてくれません。
売上金額の少ない取引先を抱えている社員達は、優良顧客にしようと努力をしても成果が出ず、かといって取引を停止することが出来ないのが現実でした。
優良顧客に対しても、どのように緊密な関係を築いていけばいいのかわからないまま、以前と同じ対応をしていました。
この状態では、どんなに素晴らしい戦略や経営計画があっても、絵に描いた餅で終わってしまいます。
このままでは経営計画を達成することが難しいと危機感をもった経営陣が行ったことがあります。
それが、経営計画の可視化です。
目標があっても方法論がわからなければ、実行は出来ません。
目標を達成するためには何をすべきなのか、そのプロセスを具体的にして、目標と実行プロセスとの関係をわかりやすく文字や図にして示すことが可視化です。
この会社では、優良顧客との親密な関係を作ることが第一の目標になっています。
そのためには
・クロスセルで業績を伸ばした成功例の紹介や商品の品質や性能の紹介など価値を伝える。
・会社の仕組みとして、取引先の配送コストを低減・効率化させる納品体制を組むことを提案する。
・IT技術を使って、データベース化をし、いつでもどこでも商品別売上や収益率や取引先別の収益性を図る経営支援システムを構築する。
・目標を達成するために、社員教育を実施し、教育が目標にどのように結びついているのかも理解させて、社員の意識を目標に向けていく。
経営目標を達成するには、これらの実行プロセスを方法論として示すことが必要です。
単に経営計画や目標を発表して、かけ声や気合いを入れるだけでは目標は達成できません。
経営戦略や経営計画とそれを実行するためのプロセスとの関係性が1枚の用紙で社員全員がわかるように可視化することが目標を達成するためには必要なツールであり、それが統合シートであり、戦略マップです。