「うちは人間関係は悪くないんです」

組織の相談を受けていると、こうおっしゃる経営者の方は少なくありません。

実際、ギスギスしているより、話しやすい方がいい。
険悪な空気より、助け合える雰囲気の方がいい。
それは間違いありません。

職場において関係性は、とても大切です。

ただし、ここで大きな落とし穴があります。

関係性が良いことと、組織が機能していることは別である

それは、関係性が良いことと、組織が機能していることは同じではないということです。

実際には、表面的には仲が良くても、組織としては弱っていることがあります。

・会議では波風を立てない。
・言いにくいことは言わない。
・問題が起きても深く踏み込まない。
・なんとなく空気で回っている。
一見平和に見えますが、この状態は、長く続くと危うい。

なぜなら、組織の目的は「仲良くすること」ではないからです。

会社は、成果を出し、お客様に価値を届け、継続していかなければなりません。

そのためには、ときに厳しいことも言い合う必要があります。

見たくない問題にも向き合わなければなりません。
つまり、関係性だけでは足りないのです。

心理的安全性は「優しさ」ではない

ここでよくある誤解があります。
それは、「心理的安全性が高い組織=優しい組織」だという誤解です。

しかし、本来の心理的安全性はそうではありません。

心理的安全性とは、何を言っても許されるぬるい状態ではなく、必要なことを率直に言える状態です。

・それは違うのではないか、と言える

・問題が起きていると指摘できる

・分からないことを分からないと言える

・失敗を隠さず共有できる

この状態があるからこそ、組織は学習し、改善していけます。

一方で、関係性だけを守ろうとすると、問題は見えなくなります。 衝突を避けることが優先され、
言いにくいことは言わず、結果として、改善が起きなくなります。

共通の基準がないと、関係性は甘さに変わる

では、なぜ関係性だけでは続かないのでしょうか。

その理由は一つです。

共通の基準がないと、関係性は甘さに変わるからです。

たとえば、「仲がいい職場」は、それ自体は悪くありません。

しかし、何を大切にし、どこを目指し、どんな行動を良しとするのかが曖昧だと、次第にこうなります。

・注意しづらい

・指摘しづらい

・評価に差をつけづらい

・問題行動にも踏み込みにくい

その結果、頑張っている人が報われず、甘えている人が放置され、真面目な人ほど疲弊します。
これでは、長く続きません。

一時的には穏やかでも、やがて不満が溜まり、業績が落ち、関係性まで悪くなっていきます。

理念は「関係性を機能させる基準」である

だからこそ必要なのが、理念・価値観・行動基準です。

私が理念を「経営のOS」と表現するのは、まさにこのためです。

理念があることで、仲が良いか悪いかではなく、「この会社として、どちらがふさわしいか」で話ができるようになります。

個人の好き嫌いではなく、共通のものさしで対話できるようになるのです。

承認の文化が関係性を“強さ”に変える

さらに、関係性が続く組織には、承認の文化があります。

ただし、ここでいう承認も、何でも肯定することではありません。

存在を認め、努力や姿勢を認めたうえで、必要なことはきちんと伝える。

これが大切です。

人は、認められていない状態で指摘されると、攻撃されたように感じます。

しかし、普段から見てもらえている、信頼されていると感じていれば、厳しいことも受け止めやすくなります。

だから、承認と基準はセットなのです。

関係性・基準・承認・成果がそろって初めて機能する

関係性を大事にすることは必要です。

しかし、関係性だけでは組織は続きません。

必要なのは、関係性の上に、共通の基準と成果への責任が乗っていることです。

これが目指すべき姿です。

言い換えれば、
「仲が良い組織」ではなく、「信頼があり、率直に言い合え、成果にも向かえる組織」

関係性が問題なのではありません。

問題は、関係性だけで組織を支えようとしてしまうことです。

組織を持続させるのは、仲の良さだけではありません。
関係性、基準、承認、成果。この四つがそろって、初めて強い組織になります。