タピオカが流行っているとなれば、タピオカ店には長蛇の列ができます。コンビニもいろんなタピオカドリンクが並びます。
ある日、道路から店内が見えるタピオカ店の前を通ったときのことです。
タピオカを残してドリンクだけを飲んでいる若い子がいました。
タピオカを食べないなら、タピオカ店で並ばなければいいのにと思ったのですが、その子の隣には友達らしき人がいたのです。きっと、友だちに誘われたから、一緒に来たんでしょう。
タピオカが好きでないのなら、別の店に行くなり、誘いを断れば良かったんですが、それが言えなかったんだと思います。
人はだれでも仲間外れにはされたくない、友達から嫌われたくない、そんな感情から友だちに付き合ったと思われます。
これを「群居衝動」といいます。
群居衝動は、孤独を恐れ、仲間をつくろうとする人間の基本的な欲求の1つです。
他人と一緒だと安心するというのもそうであり、日本人はこの傾向が特に強いように感じます。
群居衝動は、基本的な欲求ですから、会社や職場においても当然あります。
「言われたことはやるんですけど、自分から進んでという社員は残念ながら少ないんです」とおっしゃる社長もいます。
「上に従っていれば安心だ」「自分の意見を言って、目の敵にされるのは御免だ」と社員が漏らすのも根っこは同じです。
自分が他の人から変な目で見られたくない、仲間外れにはされたくないという欲求が日々の言動に表れています。そして自分のことに関心をもって欲しいと考えています。
人は皆、居心地のいい共同体を求めます。
会社の中にも自分の居場所が欲しいと考えていても不思議ではありません。
だから面倒見のいい上司を求めてしまうのです。
非公式な形での仲間なら、気に合う仲間といても何も問題はありません。
しかし仕事で、他人に引きずられてしまったり、自分の意思を持たないのでは困ってしまいます。
何事に対しても右にならえでは、考えることを放棄しているのと同じです。
また、他人の意見に従っていれば、考えないですむから、これほど楽なことはありません。
仕事で失敗をしても、他人の責任で、自分はいつも安全地帯にいることが出来るのです。
しかし、このような状態では達成感も、充実感も得られませんから、社員はいつまでたっても成長しません。
皆なが行くから大学に指定校推薦など無試験で入学し、
皆なが就職するから、何となくいいなと思った会社や親が勧めた会社に就職をしたのであれば、群居衝動になっていることは間違いありません。
そんな人に限って入社をしてみると、現実と自分が思い描いていた世界にギャップを感じてすぐに辞めていってしまいます。
社員を採用するにも、部下を教育するにも幹部社員は、社員に群居衝動があるんだということを理解しておく必要があります。
会社の中で大声を出してみたり、飛び跳ねてみたりするのは、自分に注目して欲しいからです。
他人の悪口や批判をして自分を大きく見せるのも自己重要感が不足しているからです。
組織の中で自分の存在をアピールして居心地をよくしようともがいていることと何ら変わりません。
極端な言い方かもしれませんが、精神的に大人になれていない証拠です。
もし、幹部社員が社長のYESマンであれば、これも群居衝動であることが殆どです。
群居衝動から抜け出すためには、社員一人ひとりの能力を認めることです。
自己重要感や自己有用感を高めることができれば、群居衝動からは抜け出せる可能性があります。
そして、仕事で成果を出して、この会社に自分が貢献している実感を持ち、仲間から認められている実感がもてれば、自分にとっての居心地のよい職場になります。
そのためには、仕事をやる意義を教えて、小さくてもいいので成功体験を積み重ねて、上司がしっかり評価をすることです。
これが教育の基本です。
群居衝動をするのは、他人と同じことをしていれば安心と考えており、好き嫌いで判断することが多く、深く考えてはいません。
自分の人生の目的や自己実現について考えたことがない人ばかりです。
自分の人生にとって何が大切で、生きる目的は何なのかを考える機会を設けることも教育する上では非常に大切になってきます。