A君の勤務先は理美容店を数十店経営しているチェーンです。
理美容の基礎は、カットなどの技術力であることは言うまでもありません。

会社でも技術研修は行っていましたし、A君は技術研修でも常にトップクラスで優秀な社員でした。

そのため、A君には入社後の早い時期からリピーターが多く、売上も社内の上位にいました。

A君自身も、自分には高い技術力があるから、お客様から支持されていると考えていたようです。

A君と同期の社員B君は、頑張ってはいるものの技術はA君のレベルには達していません。
何とか技術力を伸ばそうと、日々努力をしていました。

ただ、B君はお客様への気配りにとても気を使っていたのです。

お客様が来れば、気持ちのいい挨拶をし、いつも笑顔で接客をしていました。
会話でもお客様は心地よくなっていただけるように共感することに努めていました。

同期であるA君とB君の会社からの評価は同じでした。
技術力のあるA君は「売上が高い俺が何でBと同じ評価なんだ」と不満を持っていました。

やがて月日は流れ、3年が経ちました。

A君は、さらに技術力に磨きをかけていました。

技術力のあるA君の売上も決して低くはありませんが、同期のB君が、技術力のあるA君の売上を超えていたのです。

それどころか、B君は社内でも売上トップ5に入っていました。

B君は、入社からしばらくは技術力のあるA君には及びませんでしたが、努力を続けていました。
努力を続ければ、技術は伸びで行きます。

技術力も高くなっていきましたが、B君の素晴らしかったのは接客でした。

気持ちよく迎え入れてくれ、気配りがあって、会話も楽しく、B君にカットをしてもらうことをお客様は楽しみにしています。

B君には、固定客がつき、ファン客も増えて、予約がいつも一杯の状況です。

お客様は、髪を切りに理美容に行くのですが、技術力は必要になります。

しかし、どんなに技術的に優れていても、それだけではお客様はリピーターにはなりません。

それ以上に、お客様は、気持ちよくなりたい、すっきりしたい、きれいになりたいという精神的な満足も求めています。

この会社の社長も経営幹部も理美容業の経営で大切なのは、お客様の技術的満足と精神的満足の両方を満たすことはわかっています。

それがわかっていたからこそ、3年前の時点でも技術力のあるA君と接客能力の高いB君を同じように評価をしていたのです。

技術を高めることも必要ですが、お客様に喜んでいただけるために何をするべきかを、自分で考えて行動できる社員を育てていくことが重要になってきます。

努力をする力、お客様を思いやる力、気づく力、想像力を働かせる力、聴く力、共感する力、ほめる力など人間力を高めたからこそ、お客様にもそれが伝わり、B君は3年後に飛躍できたのです。

そのために会社として、社員に仕事の意義や価値観、顧客を感動させる経営、そしてどんなことが評価され、何を評価しているのかを伝えていかなければなりません。

それが、わかれば社員は努力すべき方向性がわかります。

「あに人のようになりたい」と思えるような社員が大勢いれば、やりがいも生まれ、他の社員も伸びていきます。

仕事で成長をするベースとなるのが、人間力です。

そして、人間力を高める教育をしていくのも、会社が発展していくための必要条件であると考えています。