心理的安全性の高い組織を作るベースは、コミュニケーションです。
社長や経営幹部にとって、言葉で伝えることはとても重要なコミュニケーションです。

社員や取引先などと話をする機会は多いと思います。
しかし、せっかく必要な話をしても聞き手に伝わらなければ、意味がありません。

このコラムでは、話が伝わらない理由と、話を正確に伝える方法を紹介します。

話が伝わっていないのが現実

「朝礼で連絡事項を伝えているときに、うなずきながら聞いていたと思っていたのに、内容を全く覚えていないじゃないか!」
「はい、わかりました、と返事はよいのだけれども、指示が正確に伝わっていない」
「電子メールの内容を理解していない」など

このようなコミュニケーションに対する相談を多くいただきます。

これらの共通点は、「伝えているけれど、理解していない」「ちゃんと言ったはずなのに・・」など、話し手と受け手にギャップがあるためです。

話し手としては、しっかり伝えたはずなのに、聞き手が聞いていなかった、理解していなかった。

そんなことは会社でも、日常生活でも枚挙にいとまがありません。

井戸端会議や世間話ならば、相手が聞いてくれなくても、話し手は話すことで満足していますし、大きな問題にはならないでしょう。

しかし、仕事コミュニケーションではそんなわけには行きません。

仕事コミュニケーションは、相手に意志決定を促し、行動してもらう必要があるからです。

もしも、行き違いがあれば、あとあと仕事上のミスにつながります。

さらに、話し手と受け手の間に、言った、言わないなどの感情のもつれを引き起こすこともありえます。

だからこそ、正確なコミュニケーションが必要とされるのです。

話が伝わらない3つの要因

では、なぜ正しく相手に伝わらないのでしょうか?

「コミュニケーションの本質は受け手にある」と言われますから、受け手の聞き方が悪いことも大きな原因です。

しかし、話し手に責任があることも否めません。
話が正確に伝わらない「話し手」の要因として考えられるのは大きく分けて3つあります。

思い込みがある

これがとても多いのですが、「聞き手も知っているだろう、知っているはずだ」という思い込みがあるためです。

実際にあった例では
「会議室おさえておいて」と指示したところ、小さな会議室を予約した部下に対して「なんでもっと広い会議室を抑えなかったんだ」と注意をした上司がいました。

上司としては「営業部の会議だから、広い会議室をおさえるのが当然だ」と思っている訳です。
しかし、部下は「会議室をおさえろと指示された」通りに会議室を予約したのです。

上司が「部下は知っているはずだ」と思わずに「10人の会議だから、それようの会議室をおさえてしてくれ」と指示を出しておけば問題なかったのです。

残念なことに、思い込みで指示を出したために、上司はイライラして部下を無能な奴だと思い込み、部下はちゃんとした指示が出せないダメな上司だと考え、お互いの関係性まで悪くしてしまいます。

話が長い

伝えたいことがたくさんあるのはわかりますが、話が長いと何が重要なのかがわからなくなって、正確には伝わらなくなります。

実はこれ、社長に非常に多いのです。

話をしている途中にふと思いついたことを喋りはじめて、話に脈絡がなくなったり、自慢話が始まったりすると、大切なことは伝わりません。

自分自身では大切だと思っていることがあるため、「これも伝えたい、あれも言っておかなければ」と、どんどん話が長くなってしまいます。

また、前置きや比喩が多すぎるために聞き手が混乱してしまうことも少なくありません。

長く話をしていると、話し手は「たくさん話したから、よくわかっただろう」と充実感を覚えて満足をしますが、聞き手はうんざりしていて、何を言っていたか、を覚えていないのです。

無駄な言葉・仕草が多い

伝えたい言葉以外に無駄な言葉を多く使ってしまうと、無駄な言葉ばかりが印象に残ってしまい、肝心の言葉が埋もれてしまいます。

アナウンサーやレポーターにもいますが、やたら「え~」「~ですね」「やっぱり」を連発するものですから、それが気になって話の内容が全く頭に残りません。

また、身体が左右に揺れていたり、まばたきや唇をなめる頻度が多かったり、話し手の動作や仕草が気になって、聞くことに集中できないこともあります。

言葉ではありませんが、話よりも身振り手振りに気を取られてしまうと、聞いているふりはしていても全く頭には入ってきません。

この3つがコミュケーションを阻害してしまう話し手の主な要因ですが、問題なのはそのことに話し手自身が気付いていないことです。

正確に伝える5つの方法

話が伝わらない3つの要因を避ける

思い込みを止め、話を簡潔明瞭にし、ムダな言葉や仕草をしないだけで、話は聞き手に伝わるようになります。

まずは、自分の話している姿を客観的に見ることで、修正すべき点がわかってきます。
修正すべき点だけでなく、ポジティブな言葉が多いなど、良い点も必ずあります。良い点を伸ばすようにしても話が伝わりやすくなります。

話す内容を決めておく

あれも伝えたい、これも伝えたいと考えると、話も長くなり、聞き手の集中力はなくなります。また、聞き手にとっては、多くの情報を一度に伝えられるため、内容を覚えられませんし、何が大切なのかがわかりません。

話をするときには、これだけは絶対に伝えたいことを明確にしておきます。

聞き手に合わせた内容にする

研修で「川をイメージしてください」と言うと、住んでいる地域の川をあげる人もいれば、日本で一番長い信濃川をイメージする人など、人によって様々です。

このように、同じ言葉でも人によって意味づけが違っています。

「働きやすい職場」を考える時にも、聞き手の生まれ育った環境や教育・知性、価値観などによって、働きやすい職場の意味が違ってきます。

そのため、普段の言動などから聞き手のことをよく知り、聞き手に合わせた話し方をすることで、相手に伝わりやすくなります。

確認をする

1対1や少人数であれば、話した内容の確認を取ることで、話の内容が正しく伝わっているかがよくわかります。

聞き手に話の内容を要約してもらえば、聞き手の理解度が確認できます。正確に伝わっていなければ言葉を変えるなどして、聞き手に正確な理解をさせることができます。

話している途中で確認をすることも効果的です。

わかりやすい言葉で話す

ITの専門家に話を伺うと、専門用語がたくさん出てきて聞き手は何を言っているかわからなくなります。(もちろん、わかりやすく話してくれる専門家もいます)

自分が知っているから、相手も知っているだろうと思って話していても、聞き手はちんぷんかんぷんになってしまいます。

5W2Hなどを考えて、わかりやすい言葉で、具体的に伝えることで聞き手に伝わりやすくなります。

仕事コミュニケーションは心理的安全性の基礎

話し手が自分自身の話し方、伝え方、コミュニケーションスタイルを客観的に知ることが正確な仕事コミュニケーションを取っていくためのスタートになります。

コミュニケーションは、心理的安全性の高いチームをつくるためのベースです。

そのために大切なのは「傾聴」です。

よき聞き手は、よき話し手にもなります。

心理的安全性を高めるプレーズ・ワークショップでは傾聴のワークも行います。

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