今回は、最も本質的なテーマです。
それは、なぜ社長が変わらないと組織は変わらないのかということです。
このテーマは、少し厳しく聞こえるかもしれません。
けれども、組織づくりの現場で長く仕事をしていると、どうしてもここに行き着きます。
組織は社長の「前提」を映す
・社員を変えたい。
・幹部にもっと成長してほしい。
・指示待ちをなくしたい。
・主体性を育てたい。
そうした願いの先には、必ずと言っていいほど、社長自身のあり方が問われる場面があります。
なぜなら、組織は社長の言葉よりも、社長の前提を映すからです。
前提とは何か。
それは、社長が何を信じ、何を恐れ、何を許し、何を評価しているかということです。
たとえば口では「もっと主体的に動いてほしい」と言っていても、実際には細かく指示を出し、自分のやり方と違うと修正し、結果が悪ければ厳しく詰める。
これでは、社員はどう受け取るでしょうか。
「主体的に動いていい」とは受け取りません。
「余計なことをせず、社長の期待を外さないように動こう」
と学習します。
つまり、社長が伝えているのは言葉ではなく、日常の反応なのです。
組織文化は、研修資料の中ではなく、社長のふるまいの中につくられます。
・会議で誰の意見を拾うのか
・ミスが起きたときに何を言うのか
・成果が出たとき、誰をどう評価するのか
・忙しいときほど、どんな言葉を発するのか
そうした一つひとつが、「この会社では何が大事か」を無言で教えています。
言行不一致は、組織を止める
だから、社長が変わらないまま、社員だけに変化を求めても限界があります。
現場は敏感です。
言っていることと、やっていることが違えば、すぐに見抜きます。
理念は大事だと言いながら、結局は短期売上が最優先。
人を大事にすると言いながら、忙しいときには感情的に怒る。
挑戦を歓迎すると言いながら、失敗したら厳しく責める。
こうした矛盾の中では、どんな立派な言葉も力を失います。
成功体験が、次の成長を止める
ここで大切なのは、社長を責めることではありません。
社長もまた、必死に会社を守ってきた人だからです。
自分が背負わなければ回らなかった時期もあったでしょう。
誰にも相談できず、一人で判断してきた場面もあったはずです。
だからこそ、つい自分で抱え込み、つい細かく口を出し、つい結果を急いでしまう。
その背景には、多くの場合、責任感があります。
ただ、その責任感が、ある段階からは組織の成長を止めることがあります。
創業期や拡大期には、自分で引っ張るやり方でうまくいった。
けれども、社員数が増え、会社として次の段階に進むと、そのやり方のままでは限界が来ます。
社長が全部を見て、全部を決めて、全部を背負うやり方では、組織が育たないのです。
変化の起点は、常にトップにある
ここで必要になるのが、社長自身の再定義です。
・自分は何のためにこの会社を経営しているのか。
・どんな会社にしたいのか。
・何を自分で握り、何を手放すべきなのか。
・社員を信じられないのはなぜか。
・自分は何を怖れているのか。
こうした問いに向き合わない限り、組織は本当の意味では変わりません。
私は、組織変革とは制度改革だけではないと思っています。
・評価制度を変える。
・会議を変える。
・権限委譲のルールをつくる。
もちろん、それも必要です。
けれども、その土台にある社長の前提が変わらなければ、制度は形だけで終わります。
結局、最後は元に戻るのです。
逆に言えば、社長のあり方が変わると、組織は驚くほど変わります。
・会議の空気が変わる。
・幹部の表情が変わる。
・問題が表に出るようになる。
・社員が少しずつ自分で考え始める。
すぐに劇的に変わるわけではありません。
けれども、トップの前提が変わると、組織の流れは確実に変わり始めます。
社長が変わらないと組織は変わらない。
これは、社員が悪いという話ではありません。
社長を責める話でもありません。
組織の起点がトップにある、という現実の話です。
組織が変わらないのは、社員の能力不足が原因ではありません。
本当の問題は、社長自身の前提や関わり方が、今の組織段階に合わなくなっていることにあります。
だからこそ、組織を変える第一歩は、社員を変えようとすることではありません。
社長自身が、自分のあり方を見つめ直すことです。
そこからしか、本当の変化は始まりません。


