提案すると、自分の仕事が増える
「何か改善案はありませんか?」
会議で社員に問いかけても、なかなか意見が出てこない。そんな経験をした経営者や管理職は多いと思います。
「もっと自分で考えてほしい」
「気づいたことがあれば、積極的に提案してほしい」
社長はそう考えています。
しかし、社員に意見がないとは限りません。
提案した後に何が起きるかを知っているため、黙っていることがあります。
提案すれば、自分が実行しなければならない。
通常の仕事に新しい仕事が加わる。
周囲から十分な協力を得られない。
そして、うまくいかなければ評価まで下がってしまう。
それなら、気づいても黙っていた方がよい。
社員は職場で起きていることを見て、そう判断しているのかもしれません。
挑戦には、失敗がつきものである
新しいことに挑戦すれば、必ず成果が出るわけではありません。
最初から成功が保証されているなら、それは挑戦とはいえないでしょう。
ところが、社員には挑戦を求めながら、評価は結果だけで決めてしまう会社があります。
新しい方法に取り組んで失敗した社員は、評価が下がる。
一方、これまでと同じ仕事を続けている社員は、大きな失敗をしないため、評価も下がりません。
これでは、社員にとって挑戦するメリットがありません。
社長がどれだけ「失敗を恐れるな」と話しても、社員は社長の言葉より、実際に誰がどのように評価されたかを見ています。
挑戦した社員の評価が下がれば、それを見ていた周囲の社員も提案しなくなります。
すべての失敗を評価するわけではない
だからといって、どのような失敗でも評価してよいわけではありません。
・自分の思いつきだけで始めた。
・十分な準備をしなかった。
・必要な相談をせずに進めた。
・問題が起きても報告せず、損失を大きくした。
このような行動まで、「挑戦したのだから仕方がない」と認めることはできません。
では、どのような失敗を評価すればよいのでしょうか。
その判断基準になるのが、会社の理念やビジョンです。
理念は、会社が何を大切にして経営するのかを示します。
ビジョンは、会社がこれからどこを目指すのかを示します。
社員の挑戦も、その延長線上になければなりません。
会社の理念の実現につながる挑戦なのか。
目指している未来に近づくための挑戦なのか。
お客様や社員に、新しい価値を生み出すものなのか。
その方向が合っていて、必要な準備や相談をしたうえで取り組んだのであれば、思うような成果が出なかったとしても、挑戦した行動を評価する必要があります。
失敗しても、挑戦を評価する
会社である以上、結果を問わなくてよいということではありません。
成果は大切です。
しかし、目の前の結果だけで評価を下げ続ければ、社員は確実に成功することしか選ばなくなります。
やがて、新しい提案も改善も生まれなくなります。
見るべきなのは、結果だけではありません。
・何のために挑戦したのか。
・どのような準備をしたのか。
・途中で何を判断し、どのように行動したのか。
・うまくいかなかった原因をどう考えているのか。
・その経験を次にどう生かそうとしているのか。
理念やビジョンの実現に向けて、自分で考え、必要な準備をしたうえで行動したのであれば、たとえ失敗しても、その挑戦は評価すべきです。
そして、評価すべき失敗を、社員個人の反省だけで終わらせてはいけません。
失敗を会社の学びに変える
挑戦がうまくいかなかったとき、社員本人に反省を求めて終われば、その経験は個人の中にしか残りません。
会社として、
「何が想定と違っていたのか」
「どこまではうまくいったのか」
「お客様からどのような反応があったのか」
「どの部分に可能性が残っているのか」
「次に試すなら、何を変えるのか」
を一緒に考え、組織で共有する必要があります。
最初に考えた方法では成果が出なかったとしても、挑戦の目的まで間違っていたとは限りません。
・商品としては売れなかったが、別の顧客層から反応があった。
・新しいサービスとしては定着しなかったが、既存の仕事を改善するヒントが見つかった。
・失敗を丁寧に振り返ることで、当初は想定していなかった可能性が見えてくることがあります。
失敗を「できなかった結果」で終わらせるのか。
それとも、「次に何ができるか」を考える材料にするのか。
この違いが、次の挑戦を生み出します。
失敗の扱い方が、組織文化をつくる
一人の社員の挑戦を会社全体で振り返り、そこから得た学びを次に生かす。
その姿を周囲の社員が見れば、「この会社では挑戦してもよい」と感じます。
さらに、失敗から得た学びが共有されれば、別の社員が新たな提案をするかもしれません。
最初の挑戦では成果につながらなくても、次の挑戦、その次の挑戦を通じて、新しい商品やサービス、新たな顧客が生まれる可能性があります。
それが、将来の業績を支える新しい柱につながっていきます。
反対に、挑戦した社員の評価を下げて終われば、「余計なことをしない方がよい」という組織文化がつくられます。
失敗をどう評価し、どう扱うかは、一人の社員だけの問題ではありません。
会社の組織文化と、これからの成長を左右する経営の問題です。
評価すべき失敗から何を学び、次の挑戦にどうつなげるのか。
その積み重ねが組織文化を変え、やがて新たな業績の柱をつくっていくのだと思います。


