経営理念やビジョンを掲げる企業はたくさんあります。
しかし、その経営理念が社員一人ひとりの中で「自分ごと」になっているか?と問われると、多くの企業ではそうなっていないのが現実です。
実際に企業で「人生理念や生きる目的」の研修や1ON1を行うと、「今まで考えたことなかった」と答える人が殆どで経営幹部でも多くの方が同じでした。
経営理念と人生理念を合わせることは、社長や経営幹部だけに必要なものではありません。
全ての社員が、経営理念と自分自身の人生理念を重ねることで、大きな成長と変化が生まれるのです。
今回は、その重要性と効果について、そして働く目的についても少し掘り下げて考えてみます。
お金のために働く
「働く目的は、お金を稼ぐこと」だと、考える人が政府のアンケートでも多くいます。
生活を支え、家族を守り、夢を叶えるためにお金は絶対に必要なのです。
「お金のために働く」と素直に思うことは、当たり前のことです。
しかし、ここにひとつだけ注意すべき落とし穴があります。
「お金だけ」を目的にしてしまうと、いつか心が空っぽになってしまうことがあるということです。
高い給料を得ても、役職が上がっても、社長になっても
「結局、自分は何のために働いているのか?」
「お金だけを目指す人生でよかったのか?」
「誰のために頑張っているのか?」
その答えを見失ってしまうと、充実した人生にはなりません。
働く目的に「お金」は必要。
でも、そこに「生き方」「誇り」「貢献」というもうひとつの軸を持つことが、働き続けるエネルギーと幸福感を与えてくれるのです。
理念と人生を重ねると、仕事が変わる
そこで重要になるのが、会社の理念と自分自身の人生理念を重ねることです。
たとえば、人生の目的や人生理念が
「誰かの成長を支えることに喜びを感じる」
「挑戦を続ける人生を送りたい」
「信頼を積み重ねて生きたい」であれば、会社の掲げる経営理念やビジョン、価値観に重なりを感じられます。
重なっていることを感じれば、目の前の仕事は単にお金を稼ぐだけではなく、自分自身の生き方そのものになります。
「会社のために」ではなく、「自分の人生を充実させるために」働くことになるのです。
この感覚を持った社員は、モチベーションの質が根本から変わります。
指示を待たず、自ら考え、動き、成長していく自律型人材になって行くのです。
理念に生きる社員は、困難にも強い
仕事には順風満帆なときばかりではありません。
失敗もあれば、理不尽な場面、どうにもならない壁にぶつかることもあります。
そんなとき、単に「お金のため」だけに働いている人は、心が折れやすくなるのです。
しかし、「自分はこの人生理念、この生き方を貫きたい」という想いを持っている人は、違います。
経営理念と人生理念が重なっている社員は、苦しいときほど本当の意味で踏ん張ることができます。
目の前の困難を「自分を試す機会」と捉え、粘り強く成長していく力を持っています。
理念を体現する社員が組織文化をつくる
そして、理念に生きる社員たちは、やがて組織全体の文化を変えていきます。
日々の言葉づかい、仕事への取り組み方、仲間への関わり方。
そうした小さな行動の積み重ねが、組織の空気を温かく、強く、前向きなものへと変えていきます。
理念と人生を重ねた社員は、「会社から与えられた目標」ではなく、
「自分の人生の一部としての目標」を追いかけます。
それがチームに伝わり、組織全体の一体感と活力を生み出していくのです。
人生理念と経営理念を結びつけるには
では、どうすれば人生理念と会社の理念を結びつけられるのでしょうか?
一番大切なのは、「対話」と「内省の場」をつくることです。
「あなたは何を大切に生きてきたのか?」
「どんなときに自分らしさを感じるか?」
「これまでで一番誇りに思った仕事は?」
「これからどんな生き方をしたいのか?」
「会社の理念と、自分の生き方はどこで重なるか?」
これらを、ただ頭で考えるのではなく、言葉にして語ること。
自分の内側から「腹落ち」する感覚を育てること。
自律型組織を作る際には、最初の段階で社長には「人生理念」を詳しく徹底的に考えて腹落ちしていただいています。
それができたとき、理念は単なるスローガンではなく、「自分自身の旗」になります。
研修や1on1で、こうした時間を取ることは、スキル研修以上に意味のある投資だと私は考えています。 そのプロセスを丁寧にサポートすることで、
一人ひとりが「自分の人生を生きるために働く」感覚を持つことができるようになります。
まとめ
経営理念と人生理念を重ねることは、社長、幹部だけではなく、一般社員こそ取り組むべきテーマです。
お金のために働くことは大切です。
でも、お金だけでは心は満たされない。
自分の生き方と会社の理念が重なったとき、仕事は作業ではなく志事(しごと)に変わり、働く意味そのものが輝き出します。
理念に生きる社員が増えた会社は、間違いなく、強く、しなやかで、魅力的な組織になっていくでしょう。