数字が苦手な社員の方も少なからずいます。苦手な人は学生時代の数学にアレルギーを持っている方が多いようです。
だから、経営数値という言葉や、数字を思い浮かべるだけで拒否反応を示す方もいます。 しかし、会社の経営にとって経営数値は会社の今を見つめる鏡であり、未来へ進むための羅針盤なのです。
経営数値って何?
「経営数値は経理担当や社長の仕事」というイメージがつきまといます。しかし、会社や社員一人ひとりが成長するためには、全ての社員が数字に強くなることが必要なのです。
社員にとっては、経営数値といわれても、ピンとこないこともあるでしょう。
経営数値とは、売上や利益、経費、資産・負債、収益性(B/S,P/L)など、企業活動を客観的に示すためのデータです。
そして、数値に基づく判断をすれば、経営者の主観だけに頼らず、客観的な現状把握ができます。さらに、数値を分析することで、自社の強み・弱みを発見し、成長のための課題を明確化できます。
なぜ「数字」が社員全員に必要?
中小企業は限られた資源で成果を出し続ける必要があります。だからこそ、数字が“現場の共通言語”になると、意思決定が速く、ムダが減り、利益が積み上がります。
たとえば飲食なら、客数・客単価・原価率・粗利額・滞在時間などの関連性がわかるだけで、社員の動きが変わります。
滞在時間の長いお客様は客単価が高いことがわかれば、接客の仕方も変わってきます。
損益分岐点を理解したスタッフが、シフトや提案を自ら工夫して始めるのは、現場でよく起きる“うれしい変化”です。
自分が考えた結果で、数字が変化すると、モチベーションが上がり、仕事は楽しくなります。
人事評価でも、数字は味方
評価についても、数値は大切です。社長や上司の感覚だけで評価されてしまうと「結局、何を頑張ればいいの?」とモヤモヤが残ります。
そして、「イエスマン」や「ごまをする」社員が増え、組織の活力が失われ、業績も伸びていきません。
評価の基本も、行動と成果を数字(売上・利益・アプローチ件数など)で評価することができれば、「何に努力すればいいのか」がわかり、納得感とモチベーションがグ~ンと上がります。
評価の面談も、「感覚での評価」ではなく「数字」で評価するからこそ「どこが伸びて、次はどこを伸ばす?」という前向きな会話になり、社員も伸びていきます。
数字は社員を叱るムチではなく、社員の能力を伸ばすための根拠なのです。
どうやって経営数値を学ぶのか?
数値教育のポイントは、
机上の学習→現場ワークショップ→対話型をセットで繰り返します。
具体的には
1.基本を知る
身近な例をもちいて、わかりやすく、経営に関する数値の基礎を教えます。
2.ワークショップで体験的に学ぶ
自社の経営数値を使って、ケーススタディで、どこの数値が変わると、どのような影響があるかを考える機会をつくります。
3.日常的に数字へ触れる
月次報告会やチームミーティングで、数字を共有する時間を定期化すれば、 “数値感覚”が育ちます。
4.小さな成功体験を積む
目標達成やコスト削減が数字で見えると、「やれば変わる」が実感になり、自信が行動を後押しします。
具体的な成功例
製造業A社:
経営者が定例ミーティングで売上・利益をかみ砕いて説明し、社員が数値を分析したた結果、各工程のコストと利益貢献が見えるようになり、現場から改善提案が雪だるま式に増え、歩留まりと粗利率が同時に改善しました。
サービス業B社:
従業員に損益分岐点と「赤字にならない最低受注数」を共有したところ、提案が数字起点に変わり、受注単価が上がって売上も伸長しました。
経営者が取り組むべきポイント
トップや経営幹部が率先して、数値をもちいた会話をすることが大切です。
「ちょっといいかな?」から「3分だけ時間をもらえるかな?」と言い方を変えるだけでも、数値に対する感覚は向上します。
そして、「この数字は会社にとって何を示し、社員にとってどんな影響があるのか」を、現場の例を交えながら、何度でも伝えていきます。
さらに、役割やレベルに合わせて学習設計をすることで、経理や管理部門だけでなく、営業・生産・現場が自分ごと化できる体系的プログラムを準備すれば、「数字がわからない」という壁は必ず低くなります。
おわりに
「数字は、ちょっと苦手…」という声があるのは確かです。
でも、数字は一番フェアで、努力を見える形で見せてくれ、次の一歩を一緒に考えさせてくれます。今日から、数字を“叱るため”ではなく“育てるため”に。
社員が数字を理解し、数字で語り、数字で動けるほど、会社はしなやかに、そして確実に強くなります。


