日々の業務の持つ意味

「個店からチェーン店まで社員が自分で考え行動する『自走型成長店舗の作り方』
お客様が感動し、売上・利益が伸びる心理的安全性の高い会社と店舗をつくる」

のキャンペーンを行ったところ、6年前にコンサルを受けて頂いた会社の社長からメールを頂きました。
「本の通りにやって欲しい」とたった一言だけの短いメールだったので、すぐに連絡をしてみました。

「売上・利益も順調なんだけれども、営業にしても、マネジメントにしても、私(社長)がいないと会社がまわっていかない状況なんです。なんとか分業の仕組みをつくって部下に仕事を任せていきたい」とのご依頼でした。

自律して働くようになるには、会社の憲法とも言える理念やビジョンを社員が理解していることが大切です。この会社は、経営理念もビジョンも明確になっています。

社長に伺ったところ「経営理念やビジョンは、賞与支給前の年2回の個人面談のときには伝えている」とおっしゃっていました。

しかし、日々の業務に追われていると目先の仕事が最優先になって、経営理念やビジョンのことは失念しているケースが多いのです。

そこで、この会社のスタッフ何人かと面談をしました。
確かに経営理念やビジョンについては、言葉としては暗記をしています。

ところが、質問をしていくと日々の業務が、どのように経営理念やビジョンに貢献しているかを理解していませんでした。

そして、その業務が顧客に対してどのような貢献をしているのかも、不明確になっています。

自分で考えて仕事をしていくためには、会社の憲法とも言える経営理念やビジョンが業務と関連していることを理解していくことが絶対条件です。

顧客にとってどんな価値を提供しているかを意識して仕事をすることが必要なのです。

経営理念と業務の関連性を理解する

これはある会社の入社3年目研修で行ったことです。

経営理念を改めて全員で共有し、経営理念を各社員がブレークダウンして、現在の仕事とどのように関連をしているのかを話合ってもらいました。

数人ずつのグループに分かれて経営理念をブレークダウンして行くうちに、たとえ単純な作業でもルーティンワークでも経営理念に密接に関連しており、顧客に貢献していることが理解できるようになります。

イソップ童話のレンガ積み職人、またはドラッガーの石切職人の例でもあるように、レンガ積みの作業一つをとっても、嫌々ながら仕事をしている職人と「歴史に残る偉大な大聖堂を造る」という目的を理解している職人では、仕事の質も変わってきます。また、仕事の精度もあがります。

経営理念と自分の仕事の関連性を理解した上で、社員一人ひとりが会社に対しての思いや今後どのようにしていきたいかなどを考えて意見交換をしました。

その結果、会社や経営理念、ビジョンに対する理解が深まり、会社に対する姿勢や仕事に対する取り組み方も変わっていきました。

経営理念の理解を定着させる

せっかく研修を行っても、人間は時間が経てば忘れてしまいます。
忘れずに経営理念を定着するためには、経営理念やビジョンを繰り返し伝えることが大切です。
朝礼でも会議の席でも結構です。

単に経営理念の言葉を述べるだけでもいいのですが、社員が経営理念を理解し共感、そして共有するためには、社長が経営理念やビジョンの出来た主旨などをストーリーとして語り掛けることです。

どんなに立派な経営理念より、この根底に流れる社長の思いを伝えることが、社員が共感し、理解を促します。

会議の席では、社員の発言に対しても
「経営理念から考えるとどうだろうか?」
「ビジョンを達成するためにどのように貢献できるのか?」
「その商品・サービスは、我が社の独自性になりうるか?」など、

常に経営理念やビジョンを意識させた問いを発することを習慣化すれば、理解がすすみ、定着をしていきます。

また、経営理念やビジョンに沿った取り組みをして、顧客に感動を与えたり、業績向上に貢献したりした場合には、会議の席で発表をすれば、さらに経営理念やビジョンを社員が大切にします。

社員が自律して働くようになるベースが、経営理念・ビジョンの理解・共感・共有です。