新入社員研修は、毎年ほぼ同じ内容を踏襲する形で行われる会社も多いようです。
いまの研修内容で、人材は育っていますか?
せっかくコストを掛けて、採用して、教育しても、期待通りに育っていなかったり、入社後3年以内に退職をされてしまえば、会社にとっても大きな損失となります。
社会人としての心構えやマナーを学ぶことはとても大切です。それ以上に、長く勤務し、会社の中核となる人材の育成を目指す新入社員研修の方法を紹介します。
新入社員研修の目的
社会人としての基礎を身につける
人は他人を6秒の間に判断すると言われます。
判断基準は、身だしなみやマナー、表情、身のこなし、話し方などです。
社会人として、信頼を得るためにはこれらのことを身につけておく必要があります。
スマホが1人1台の時代ですから、電話応対やメール等についても社会人として信頼を得られるようにしておく必要があります。
会社の事業内容、就業規則の理解
入社前に、経営理念やビジョン、事業内容などは調べているはずです。
しかし、入社すると外部からではわからないこともたくさんあります。
経営理念の理解と共感、会社の業務全般の把握とこれからの業務に必要な知識を身につける必要もあります。
また、組織とはどういうものか、組織が果たすべき責任についても理解させる必要があります。
昨今ではたった1人の社員が不祥事を起こしただけで会社の信用を失墜させてしまうこともあり、コンプライアンスについてはしっかり教育しておく必要があります。
仕事コミュニケーション力をつける
仕事でのコミュニケーションは、相手に意志決定を促し、行動してもらうためのものです。
そのため、正確な報告・連絡・相談が出来なければ、仕事上のミスにつながってしまいます。
まずは社内のコミュニケーションを円滑に出来るようにする必要があります。
さらに、取引先や顧客との間に、言った、言わないなどが起きてしまうと、感情のもつれを引き起こして、クレームになってしまうことさえあるのです。
だからこそ、新入社員研修の段階から仕事コミュニケーション力を身につけることは欠かせません。
早期に戦力化する
座学やロールプレイングなどで、十分な知識を学んだら、現場で実践的な教育するOJTが新入社員を早期に戦力化します。
現場で仕事を覚えるためには、先輩社員が指導係であるメンターとなって教育を担当します。年代が近ければ親近感があり、新入社員も仕事のこと、その他のことについても話しやすくなります。
入社早々は、慣れない仕事で、不安になることもあります。メンターは精神的な支えとなって新入社員をフォローする役目も担っています。
メンターは新入社員のロールモデルになって、「あんな社員になりたい」と思えるような人材をあてます。
新入社員研修でやってはいけないこと
褒めすぎる
私どもも、出来ない所を指摘するよりも、努力した点、持っている能力を評価して、人材を伸ばすことをおすすめしています。
昭和の時代にあった、叱って教育することはすでに時代遅れになっています。これからは、社員の良い点を評価することで人材育成をしていくべきだと考えています。
しかし、新入社員研修では、評価しすぎない、褒めすぎないことが重要です。
新入社員は、まだ何も仕事が出来ません。
何も仕事が出来ていいないのに、新入社員研修の段階で褒めてしまうと、「自分には能力がある」「このままでいいんだ」と勘違いをする社員がでてきます。
新入社員として配属されると、先輩社員の手伝いや雑務をしなければならないこともあります。
自信を持たせた状態で実務に入ると、「これは自分のやるべき仕事ではない」「もっと高いレベルの仕事がしたい」と考えてしまいかねません。
こうなってしまうと「自分のイメージした業務とはちがう」と不満を持ってしまうのも当然です。
入社3年以内に退職する理由の1つに、仕事が自分に合わなかったが上げられています。
これがきっかけになって、「仕事がつまらない」「もっと自分には能力がある」と理由をつけて辞めていってしまいます。
もちろん、研修終了後配属先では、少しでも進歩したところ、出来るようになったことについては、評価して伸ばしていきます。
コミュ力が高いと思わせる
新入社員研修では、自分は出来ていなかったんだと思わせる研修をすることもあります。
新入社員の採用基準のトップは、コミュニケーションが取れる人です。
そこで、新入社員研修では、特別なコミュニケーション研修を取り入れています。
目的の一つは、コミュニケーション能力を高めること、もう一つが現段階ではコミュニケーション力がないことを実感してもらうためです。
知らない者同士が集まる新入社員研修ですから、自己紹介をします。一般的には紹介をしたら拍手でおわりです。
ところが、特別なコミュニケーション研修では、自分の自己紹介の状態を客観的に観るようにしています。
ビデオで撮影をすると、身体が左右に揺れていたり、視線があちこちに飛んだりと、話し手の動作や仕草が気になってしまうと、話に集中できず、話の内容は聞き手に伝わりません。
自分の自己紹介を文字に起こしてみると、いかに無駄な言葉が多いかがわかります。
伝えたい言葉以外に無駄な言葉を多く使ってしまうと、無駄な言葉ばかりが印象に残ってしまい、話の内容が頭に残りません。
他にも特別なコミュニケーション研修では「自分が知っていることは、聞き手も知っているだろう、知っているはずだ」という思い込みを知ることができます。
今までの経験や学習などによって、同じ言葉でも捉え方が様々です。
話し手が考えていることと聞き手が考えていることが違っていれば、正確なコミュニケーションは期待できません。
特別なコミュニケーション研修を実施すると、コミュニケーションが出来ていなかったことが、講師が指摘しなくても新入社員が痛感することになります。
新入社員研修でやるべきこと
気付きを与える
新入社員研修では、ビジネスマナーや社会人として、会社で働くに当たって必要なことを教える講義形式での座学は必要です。
しかし、座学は与えられる研修で、受け身です。
新入社員が研修の内容と違うことを考えていても、講師を見て頷いていれば真面目に研修を受けていると思われます。しかし、研修の内容は身についていません。
学びの基本は「気づき」です。研修を受ける新入社員自身が「気づき」を得られなければ、変わりませんし、成長はありません。
講義形式での座学も必要です。
さらに積極的、能動的な参加を促すのであれば、他者からの刺激を受けることのできるグループワークなど参加型の研修がおすすめです。
ある会社のグループワーク
ある会社の新入社員研修では、「働く理由」をグループで考えてもらいました。
このグループワークの目的は、働く理由を考えることで、参加者自身の仕事をする目的や仕事に対する考え方、さらには自分自身の在り方を探ることです。
新入社員がそれぞれの意見を発表することで、同期である他の新入社員の考えに刺激を受けることも、共感できることもあります。
お互いを理解しあい、結びつきを強めるメリットもグループワークのメリットの一つです。
仕事に対する価値を知ることで、新入社員の仕事に対するモチベーションと成長速度は上がっていきます。
新人研修は全社員のもの
新入社員研修が終わって、それぞれの職場に配属されたときに、研修での内容と先輩や上司の言うことが矛盾しているようでは、新入社員は不信感をもってしまいます、
これも会社に対して失望をしてしまう原因の一つです。
新入社員研修は新入社員だけのものではありません。
社長はもちろん、全社員が新入社員研修では、どのような内容で何を行ったのかを理解しておく必要もあります。
場合によっては、上司や先輩社員も新入社員受け入れるためのグループワークをやることで新入社員の教育効果が上がります。
会社一丸となって新入社員を育てていくことが、会社の魅力を高め、定着率を上げていくためにとても重要です。
実際に全社員で新入社員研修の企画を考え、社員が講師を担当した会社では、新入社員の3年以内の離職率が19%から11%へと改善しました。
新入社員研修での3つの必須プログラム
社長の想いを伝える
新入社員研修で絶対にやっておくべきことは、経営理念とビジョンの浸透です。
経営理念を言葉として伝えるだけでなく、経営理念ができた理由や背景を知ることで深い理解につながります。
そのためには、社長が経営理念を作った背景を物語として新入社員に語ることがとても重要なのです。
ある外食チェーンの企業理念は「お料理とおもてなしでお客様を幸せにする」です。
この企業理念の背景には社長の幼少期の体験からの強い思いが込められています。
社長は、農家の六男に生まれ、幼い頃は裕福な生活をしていません。
それでも、お祭りなど年に数回だけ美味しい物を食べることができました。
このときは、とても幸せを感じたのです。
その幸せを多くの人に届けたくて、飲食店で働き、独立をして店舗を拡大してきました。
単に言葉として経営理念を語っても「ふーん、外食だから当たり前だよね」と感じるだけです。
ところが、物語として社長が語ると「だから、この経営理念になったんだ」と新入社員の心に大きく響きます。
このように物語として社長自身が語ることで、経営理念に共感しやすく、これからの行動の指針にもなります。
価値観を揃える
経営理念や行動規範は社長の価値観から出来上がっていることが多いのです。
経営理念や行動規範を理解することは、社長の価値観を理解することにもつながります。
理解からもう一歩進んで、経営理念等と新入社員の価値観の一致点を見つけることができれば、仕事をすることが自分の価値観を大切にしていることになり、経営理念を実現することも可能になります。
ところが、社員一人ひとりの価値観は様々です。経営理念を理解していても「経営理念は知っているけど、お金のために働いているから」と思っている社員がいても不思議ではありません。
このように答える社員に仕事に対する価値観がないかと言えば、決してそんなことはありません。
今まで考えたことがなかっただけです。
「感謝日記」「青春熱中物語」や「人生年表作成(人生未来設計図)」などの研修プログラムを実施すると、自分の人生に対する価値観がわかり、経営理念との共通点も見えてきます。
経営理念や行動規範と個人の価値観が一致をすれば、仕事をすることが自分の価値観を充足させることができ、自分の成長にも、会社の成長にもつながっていきます。
正しい仕事の仕方を伝える
経営理念を理解・共感し、自分の価値観と共通点を見つけたら、次に必要なのは新入社員に正しい仕事の仕方を理解させることです。
ある会社の社長が社員に求める正しい仕事の仕方は「顧客への提供スピードの速さ。そのためには顧客への催促も急がせる」です。
これを社員に徹底させました。
いままでは顧客に気を遣って、催促をするのをためらっていた社員もいましたが、正しい仕事の仕方を伝えることで、顧客への提供スピードが速くなり、顧客の満足度も上がりました。
社長の示した正しい仕事の仕方をつたえたことで、社員の意識も変わり、残業時間も短縮され、ライフワークバランスも改善されました。
まとめ
新人教育は、これからの会社を支える人材育成のスタートです。
スタートだからこそ、社会人として信用されるためにビジネスマナー、敬語の使い方、ビジネス文書の書き方などの基礎知識は必要です。
もう1つ大切なのは、仕事に対する意識を高めていくことです。
なぜ仕事をするのか、自分の仕事に対する価値観はなんなのか、どのように社会貢献をしていくか、を不明確なままにしてしまうと、社長が目指す人材には育ってくれません。
一生懸命するのだけれど指示がないと動けない、1週間先、1ヶ月先を考えて仕事をしていない、依存型社員になってしまって自律型社員が育っていない、などのお悩みを社長は話されます。
また、厚生労働省の2016年離職率のデータから、退職をする理由を探ってみると、労働条件・労働環境が良くなかった、仕事が合わなかった、人間関係が良くなかった、これらが主な理由として挙げられています。
なかでも、「仕事が合わなかった」のなかには希望部署に配属されなかったとの理由もありますが、それだけではないはずです。
仕事に対する意識や自分の本当の価値観を深く考えなかったことも大きく影響をしています。
ある会社では、社員が辞めたいと申し出てきました。
理由を聞いてみると「インテリア関係の仕事がしたい」とのことです。
本当にインテリアの仕事がしたければ、別業種である今の会社には入っていなかったはずです。本当の退職理由は他にあったと思われます。
このように、入社の動機があいまいであれば、退職を決意するのもあいまいな理由です。
そして、現実的には、あいまいな動機で入ってくる社員も決して少なくはありません。
このままの考えだと、転職を繰り返してしまうことになりかねません。
だからこそ、仕事に対する意識や自分の価値観を新入社員研修のときに考えておくべきです。
新人育成は、新入社員研修だけで終わらず、長期的な視野で考えて行く必要があります。
1年目は、仕事に対する考え方と価値観、そして良い習慣を身につけていくことが主な目的です。
新入社員研修、3ヶ月または6ヶ月ごとののフォロー研修などを行って、育成をしていきます。
新入社員研修を従来とは違った形にしたい、定着率を高めたい、会社の中核となる人材を育てたい、とお考えならば、お気軽にお問合せください。