社員がもっと前向きに仕事ができるような組織風土にしたい」とセミナーに参加してくださった常務からご相談がありました。
組織風土とは、長い歴史の中で培われてきた会社の考え方であり、行動パターンです。
それは、社長をはじめとした社員の価値観の集合体でもあり、売上や利益、採用や定着率については組織風土が大きく影響をしています。
そのため組織風土を変えるには、時間が掛かるとも言われています。
組織風土を変えたいと言われるときには、往々にして悪い点ばかりに目が行っていることが多いように思います。
「うちの会社は、利己主義で協力しない」「コミュニケーションが取れていない」などと常務もおっしゃっていました。
そんなときにはすこし考えてみて下さい。本当に「協力しない」のでしょうか?
過去にだれ1人として、協力して仕事をしたことがないのでしょうか?
問題思考と解決思考
常務に伺うと「んー」と考え込んでいました。
そんなことはないはずです。もし、だれも協力しないのであれば、組織はとっくに壊滅しているはずです。
確かに「協力しない」ことの方が印象に残ってしまい、「それがうちの会社の悪いところなんだ」とレッテルを貼っているだけだったりします。
レッテルを貼ってしまうと悪い部分だけに注意が向くことになり、いい部分を見なくなってしまいます。
しかし、レッテルを剥がして、協力しているところに目を向けるようになれば、考え方も変わってくるはずです。
「なぜ協力しない」「なぜコミュニケーションが取れていない」などと、問題点を指摘されれば、言い訳と自己保身に走るだけで、本当の原因はわかりません。
人や組織について、問題の原因を追及しても、解決策は出ず、不快になるだけです。
それよりも、これまでの思考を変えて、出来たところを増幅させる、問題を解決する方法を探っていくことの方が解決策はでてきます。
問題思考
解決思考
組織風土を変える第一歩
問題思考を解決思考にかえて行くためには、教育訓練が必要です。
思考を変えて行くためにも、確実に出来る基本的なことをルール化して実行していくことが、組織風土をよくしていきます。まずは21日、そして90日あれば習慣化できます。
スローガンだけを掲げて個々人の自主性に任せておいても効果は薄いので、社内でルールを作って実行することが大切です。
1.あいさつ
アイコンタクトをとって、「○○さん、おはよう」これだけで朝から気分がよくなります。名前をつけて挨拶をするとさらによくなります。
先ほどの常務が困っていたのが、社長が挨拶をしないことです。社長が率先しないと部下はあいさつを軽視します。
まずは、社長、経営幹部の皆さんが積極的にあいさつをしていただく必要があります。
上司が元気なあいさつをすれば、部下もします。
2.ありがとう
相手の行動に対しては、ちゃんと感謝を伝えることで、関係性がよくなります。
フィッシュカードやサンキュウカードを書いている会社もありますが、声かけだけでも十分です。何かをしてもらったら「ありがとう」をいうことで職場の雰囲気が明るくなります。
でも、これが言えないのが、中年以降の男性です。恥ずかしがってしまうのか、いままでやってこなかったから抵抗感があるからか、自尊心やプライドが邪魔するのか、できないことが多いんです。
そんな時は、コミュニケーション・ワークショップで実体験を通して思考から変えていきます。
コミュニケーション・ワークショップに参加された社長が「ありがとう」を家庭で実践すると夫婦関係もよくなったとおしゃっていました。
以前は奥様がお茶を出してくれても当たり前だと思って何も言わなかったのに、お茶を出してくれたときに「ありがとう」というようになったら、奥様からのサービスもよくなり関係もよくなったそうです。
「ありがとう」は魔法の言葉なんです。
3.アイコンタクト
指示を出すときも、相手の目を見ることは、真剣に対応している証しです。
社長や経営幹部はお忙しいので、パソコンを見ながら指示をすることもありますが、相手からすると自分への指示は大切な指示ではないと思ってしまうこともあります。
相手の目を見ないことがどれほど不快なのかを経営幹部が体験すれば、アイコンタクトの実施率は高くなります。
4.体操
ある大手包装資材を作っている企業では、朝みんなに元気がないので、若手社員が「ラジオ体操をしましょう」と提案をしました。
体操を始めた頃は参加者も少なかったんですが、課長と20歳代の若手が頑張るようになってからは、参加者も徐々に増えていき今では全員が朝、ラジオ体操をしています。
体操が終わったら、ハイタッチをしてから仕事はじめます。
身体を動かすこと、元気に声を出すことは、心も前向きにしてくれます。そして、全員が同じ行動をすることで、一体感も生まれます。
5.整理整頓
職場をきれいにすることで気持ちも清々しくなります。
まとめ
基本的な行動が定着すると会社の雰囲気は良くなりますし、組織としても「やればできる」という小さな成功体験ができます。これが業績や生産性にもいい影響を与えます。
その上で、問題思考から解決思考に変えて行けば、組織風土も良くなっていきます。
様々な問題がある組織でも「基本的行動」と「解決思考」で解決への道筋が見えます。
「最近、うちの会社変わってきてない?」と社員が感じるようになるのに、それほどの時間はかからない、そんなことをコミュニケーション・ワークショップを実施し、継続的に組織の変化を見ていると実感します。