同じセミナーでも、関心を持つテーマは違う

先日、「社員が自ら動き出す組織の作り方セミナー」を開催しました。

参加された経営者の皆さんからは好評で、セミナー後には個別相談のご依頼もいただきました。

今回、特に関心が高かったのは「権限委譲」です。

社員に仕事を任せたいと思っている。しかし、どこまで任せてよいのか分からない。
任せても、最後には社長が確認しなければならない。結局、仕事が社長のところへ戻ってきてしまう。

こうした悩みを抱えている経営者が多かったのだと思います。

ところが、前々回に同じセミナーを開催したときは、「関係性」に関心を持たれた方が多くいました。

「組織づくりの中で、ここまで関係性を取り上げている同業者は少ないですね」

そのような感想もいただきました。

また、理念やビジョン、経営戦略について、もっと知りたいという方もいます。

同じテーマのセミナーを開催しても、参加者によって強く反応する内容が違います。
それは、それぞれの会社が抱えている課題や、組織づくりの現在地が違うからです。

自律型組織をつくる三つの層

私は、社員が自ら考えて動く組織をつくるためには、「理念」「関係性」「仕組み」の三つの層が必要だと考えています。

理念とは、会社がどこへ向かうのか、何を大切にするのかという方向性や判断基準です。

関係性とは、社長と社員、上司と部下、社員同士が、安心して意見を伝え、互いを認め合える土台です。

仕組みとは、権限委譲、評価制度、会議、目標管理など、社員が実際に仕事を進めるためのルールや方法です。

この三つを、私は「自律型組織の三層設計図」と呼んでいます。

三つは、それぞれ独立しているわけではありません。

理念があっても、社員との関係性が悪ければ、社長の言葉は十分に伝わりません。

関係性が良くても、役割や権限が決まっていなければ、社員はどこまで自分で判断してよいのか分かりません。

仕組みを整えても、会社が目指す方向が共有されていなければ、社員は自分なりの判断で動き、社長が望んでいる方向とは違う結果になることがあります。

同じ問題でも、原因は会社によって違う

経営者からよく聞くのが、

「社員が自分で考えて動かない」という悩みです。

表面に現れている問題は同じでも、その原因は会社によって違います。

ある会社では、会社の理念や判断基準が社員に伝わっていないため、社員が判断できずにいるのかもしれません。

別の会社では、社員が意見や提案をしても、上司に否定されることが続き、余計なことを言わない方がよいと考えているのかもしれません。

また別の会社では、社長と社員の信頼関係はできていても、役割分担や権限が曖昧なため、社員が社長の判断を待っていることがあります。

社員が動かないからといって、すぐに権限委譲の制度をつくればよいとは限りません。

関係性を良くするために、対話の機会を増やすだけで解決するとも限りません。

理念を何度も語れば、社員が自ら動き始めるわけでもありません。

大切なのは、目の前に起きている問題だけを見るのではなく、その問題が三つの層のどこから生まれているのかを考えることです。

自社が止まっている場所を見極める

セミナーで経営者が強く関心を持ったテーマには、その会社が現在抱えている課題が表れているのかもしれません。

権限委譲という言葉に強く反応したのであれば、社長に仕事が集中し、社員に任せられていない状況があるのでしょう。

関係性に関心を持ったのであれば、制度やルールを整える前に、社内で安心して意見を交わせる土台が必要だと感じているのかもしれません。

理念に関心を持ったのであれば、会社が目指す方向を社員と共有できていないという問題意識があるのだと思います。

組織づくりには、「どの会社も、まずここから始めればよい」という共通の正解はありません。

だからといって、理念、関係性、仕組みの三つを、一度に変えようとすれば、社長も社員も何から取り組めばよいのか分からなくなります。

まず必要なのは、自社の組織が今、どこで止まっているのかを見極めることです。

理念でしょうか。

関係性でしょうか。

それとも、仕組みでしょうか。

自社が最初に手をつける場所を見極めることが、社員が自ら動き出す組織づくりの出発点になります。