会社には強み・弱みが存在します。
自社で認識できていない強みもあれば、弱みだと思っていたことが見方を変えれば強みになることもあります。
ある会社が強みと弱みを棚卸ししたことで、大きく利益を伸ばした例を紹介します。

強みが埋もれてしまう訳

研修では、「自分の長所を20個書いて下さい」という課題に答えてもらうこともあります。
長所を書くとなると、これがなかなか書けません。
時間を掛けて考えても、10個書ければいいほうです。

反対に、自分の欠点を20個書いてくださいというと、すらすらと20個書けてしまいます。
短所は自分自身で気にしていたり、他人から指摘されたりしているために、はっきりと自覚しています。

長所は20個書けていないのに、第三者がインタビューをすると20個は出てきます。

このように、長所は自分では当たり前のことだと思っているので、自分では気付いていないことが多いのです。

会社の経営に置き換えても同じようなことが言えます。

弱みはわかっていても、自社の強みは案外わかっていないことが多いのです。 社長とお話をしていると、言葉の中に強みの端々が見えてくることがあります。

自社の強みの棚卸し

飲食店を経営するある会社は、創業40年を超える歴史があります。
しかし、近隣に大手チェーンが出店したため、売上が下がってしまったのです。

大手チェーンのオープン時には行列ができていました。
これを見た社長は「大手には勝てないのか?」とふと漏らしたそうです。

飲食店に限らず新店ができてから3ヶ月は、物珍しさもあって売れていきます。
勝負は3ヶ月後からです。

3ヶ月がたっても売上が低迷していることを危惧して、社長は弊社に相談にいらっしゃいました。

初めて伺ったときに、試食をさせてもらいました。
味は美味しく価格もこなれています。

大手のチェーンでも試食をしましたが、味はいわゆるどこでも食べられるチェーンの味です。

両店の味を比較しても、この店が売れないわけはないと感じました。

そこで社長には、独立した時の思い、これまでの歴史やこだわりなどについてインタビューをし、調理や素材へのこだわりなど、非常に雄弁に語って下さいました。

そこから、強みを探り出していくと

・創業からの歴史が長い

・高級素材の商品がリーズナブル

・職人が作る本格和食

・落ち着いた雰囲気の店舗

・送迎あり

などが出てきました。

弱みをインタビューからピックアップすると

・単独立地で集客力が弱い

・高級感があって初見の客は入りづらい

・販促が行われていない などがわかりました。

弱みを強みに変える経営戦略

弱みを強みに変える

大手チェーンは知名度があります。看板を見ただけで、何が食べられるのかがわかります。

一方、このお店は創業からの歴史が長いために、近隣の方々は知っているだろうと考えていました。

ところが、近隣の会社などに宴会の営業に行ったところ、店のことを知っている人が少なかったのです。
店のことを知らなければ、扱っている商品や価格のことについても知りません。

社長は「40年も営業しているのに、こんなに知られていないとは・・・」とショックを受けていました。
そして、「チェーンは安いから売れているのかね?」とも考えるようになりました。

この店は安さで売っているわけではありません。
商品から考えればリーズナブルですが、チェーンよりも価格設定が高くなっています。

この店の価格帯の商品が受け入れられるか、商圏を調べてみました。するとこの地域は、商圏内人口が多く所得が高いことがわかりました。

さらに、人口は増加傾向であり、同一価格帯の競合となる和食店がないことも。

強みと弱みを調べた結果、わかったことがあります。

強みである、職人が作る高級素材をつかった本格和食がリーズナブルに食べられることをお客様が知らないのです。

弱みである、お客様が知らない、高級感があって初見の客は入りづらい、単独立地で集客力が弱いのであれば、お客様が来店するのを待つのではなく、店からお客様に攻めていけば強みに変えられると考えたのです。

来店客への販促は当然のこと、出前をしてお客様に店の味と価格を知ってもらうことに決定しました。
(※これは、コロナ前のことです)

弱みを強みに変えて戦略化

社会的には、飲酒運転の取り締まり強化、女性の社会進出、高齢化など、出前には追い風が吹いていたこともいい結果に結びつきました。

単独立地のロードスタンディングなどのデメリットは、出前を経営戦略に取り入れることで、弱みが強みに変わります。

さらに、出前でお店の味や価格帯を知ったお客様が来店されるようになります。

出前戦略と来店戦略のメインターゲットを、安心安全で美味しさを求める所得の高い中高年層とし、サブターゲットを、ハレの日(誕生日、子どものお祝い、長寿のお祝い等)に利用する家族としました。

そして、出前用の商品を強化し、自店の強みである、職人が作る高級素材をつかった本格和食がリーズナブルに食べられることを販売促進ツールに落とし込み、お客様にアピールをしました。

この経営戦略を実行した結果、売上は1店舗で2倍以上に増えました。お客様からも「出前で本格的な和食が食べられるのはうれしかったです」とアンケートでも感動の声が寄せられました。

経営戦略を策定した当時はまだウーバーイーツは日本に上陸していません。出前館はありましたが、注文を受けるためのポータルサイトで、自店で配達できる店だけが対象で、宅配代行サービスは行っておらず、出店している店舗は非常に少ない状態でした。

そしてコロナ禍では爆発的な売上を記録したのです。

まとめ

顧客や社会から必要とされ、競争に打ち勝って行くためには、他社にはない自社の独自性、顧客満足度の高い提供価値が必要になります。

そのためには、自社の強みや目に見えない資産(知的資産)を明確にすることが重要です。

自社の強みや目に見えない資産(知的資産)を、会社の内と外から見直すことで、今後の事業展開とそのための戦略が策定できるようになります。

知的資産経営

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