ある2代目社長は、創業社長に対するコンプレックスを持っていました。
コンプレックスは2代目社長の思い込みによるところが大きかったのです。
その思い込みを解決したのは、コーチングです。
2代目社長のコンプレックス
ある2代目社長は、社員に「前の社長は・・」と言われるたびに心穏やかではありませんでした。
そのたびに社員から創業者社長と比較されているようで不安に思っていたのです。
コンサル後に2代目社長からこの話を聞き、時間を取ってヒアリングをさせてもらいました。
2代目社長は「いちいち先代社長と比べられているようで、気分がよくない」と言っていました。
その根っこには、会社を創業した父親に対するコンプレックスがあったからでした。
そのため、社員から「前の社長は・・・」と言われると、比較されているようで機嫌がよくなかったのです。
ヒアリングを重ねていくと、その根底には2代目だから経験がすくないと馬鹿にされたくないという想いがありました。
さらに、会社の舵を取ることの不安、会社を潰してはいけないというプレッシャーが2代目社長にのしかかっていたのです。
先代社長である父親が一代で会社を築いたことへの尊敬の念もあり、父親を超えたいという想いもありました。
社長へのコーチング
そこで、「現在の会社の売上・利益はいかがですか?」と2代目社長に確認をしてみました。
「順調に年10%前後で伸びています」とお答えいただきました。
「その順調な結果を得られているのは、どうしてですか?」と聞くと
「経営計画が順調に進んでいるからです」としばらく考えた後におっしゃいました。
「順調に経営計画が進んでいるのは、どうしてでしょうか?」とつづけて尋ねます。
「社員が経営計画達成に向けて、がんばってくれているからです」とお答えになります。
「経営計画は、どなたが作成したのですか?」と確認をすると
「私が作った叩き台を先生にチェックしていただいて作成しました」と即答されました。
「それは社長がお作りになったものです。社員の皆さんががんばっているのはなぜでしょう?」とさらに伺います。
「会社の方向性を理解してくれているからでしょう」と答えていただきました。
「会社の方向性を社員に理解させたのは、どなたですか?」と重ねて伺うと
「それは、私です」と自信をもって発言されました。
「社員の皆さんは、社長についてどう思っているのでしょうか?」と聴くと
「先代と違って労働環境を整えてくれているし、働きやすくなったと思います」としばらく時間をおいた後にお答えいただきました。
「そうしたら、社員の皆さんは社長のことを2代目社長として認めているのではないですか?」とイエス・ノーをはっきりさせるために確認すると
「そうかもしれませんね」と笑みがこぼれていました。
「社長を信じてついてくる社員がいるのであれば、次の四半期の目標も達成できます。 もっとも重点をおく目標は何ですか?」、次へのコミットを求めると
「新規顧客を増やしていくためのマーケティングです。・・・・」と明確におっしゃいました。
コーチングの効果
コーチングをした結果、2代目社長は、自分の心の底にあった想いや思い込みに気付いたことで、前の社長は・・・」と言われても何も思わなくなりました。
客観的な第三者からの問いかけで、発想が変化することで、自分では気付かなかった本音が明らかになります。
さらに、明確な目標を設定するために次の四半期に向けての目標についてもコミットをしてもらい、やる気になってもらうのが、エグゼクティブ・コーチングの役割です。
社員にも確認のためにヒアリングしてみると「前の社長は・・」と言ってしまうのには他意はありませんでした。
2代目社長の方針と創業社長の方針が違っているので、つい口に出てしまうだけでした。
コーチングをしてみると、2代目社長は創業社長が作った会社を引き継ぐため、自分の会社経営が正しいのか、社員がついてきてくれるのかなどの不安があります。
その不安が、考えをネガティブにしてしまい、悪い方に悪い方に考えてしまうのです。 社長に不安があれば、経営にも悪い影響を与えます。
社長の不安を解消する
社長の不安を見つけ出す基本は、聴き手の考えを一切入れずに、素直に話を聴くことです。
話を聴いていれば、言葉の端々に本音が垣間見えます。
答えを誘導するような質問をしても、本音を引き出すことはできません。
本音を聴き出すためには、
聞き手が、言っていることを批判しないこと、
聞き手が、良し悪しを判断しないこと、
聞き手が、きっとこう言うだろうと決めつけないこと
聞き手が、態度や表情に自分の感情を出さないこと
本音がわかったら、そこから社長が持っている不安に気付いてもらうことが必要です。
そのための質問を重ねていきます。
そして、不安を取り除けたら、会社の目標を達成するため、次の目標達成に向けてのコミットをしてもらい、方法論を確認していくのがコーチングです。
それでも経営をしていれば、問題は起きます。
問題が起きれば、不安になることもあります。
そのとき、問題を解消するために社長の背中を押すのもコーチの役割です。