この仕事を始めて、何社かのご支援をしていると、業績が大きく伸びる会社と業績は伸びているものの今ひとつ伸びに欠ける会社が出てくるようになりました。

当初は、市場環境や競合他社などの影響だろうと考えていました。
ところが、市場環境が決していいとは言えず、競合他社が多くても、業績を大きく伸ばしている会社があったのです。

その会社を観察していると、業績の伸びが小幅で留まっている会社とは、大きな違いがありました。

業績が小幅だった会社の会議のときのことです。
ある支店は予算が達成できませんでした。

そのときに支店長は「既存顧客のフォローが不足しており、天候不順もあって、今月の目標は達成できませんでした」と発言をしました。

「どうしてフォローが少なかったのか?」との質問に対しても「社員にフォローするように指示は出したんですが・・・」と責任を部下に押しつけていたのです。

これには社長も怒りがこみ上げてきましたが、ぐっとこらえて冷静に「来月はどうするんだ?」と聞くと
支店長は「来月は目標を達成します」とその場しのぎの対応しかしません。

この支店長は勤続年数が長く、社長は温情で支店長にしました。
彼に大きな期待はしないものの、前年並みの数字くらいは出してくれるだろうと考えていたからです。

しかし、社長の思惑は外れてしまいました。

社長から指示が出ても、支店長がしたくないことは部下には伝えていません。
自分は仕事をせずに、部下に押しつけるようになりました。
口では素晴らしい事を言うのに、行動は伴っていません。

部下は店長の事をよく見ています。
責任感のない仕事振りをみていると、一生懸命にやるのが馬鹿になり、部下もやる気をなくします。

その結果、支店は荒れて、チームワークは乱れていきました。

このままにしておいたら数字以上に支店の社員達に悪影響を及ぼすと考えて、社長は支店長から外す決断をしました。

このように業績伸びが小幅になってしまう原因の1つに「依存型人材」が支店長など部下を持つポストについてしまうことが考えられます。

素晴らしい経営戦略があれば業績は伸びます。
しかし、経営戦略を実行に移して、実績を大きく伸ばしていくのは人です。

社内に「依存型人材」が多くいると、新しい事業や取り組みをはじめても、
「やっても無駄」「なんでこんなことしなきゃいけないの」「俺はやだなあ」と腹の中で思っていれば、成功する確率は低くなります。

依存型人材の特徴は
・他社の責任に転嫁する
・ごまかす
・困難な事を避ける
・自己中心的
・他人に依存する
・会社は何をもしてくれない
・言い訳、愚痴が多い
などの傾向があります。

もしこのような依存型社員が多くなってくれば、チームワークは悪くなり、その結果生産性も低下し、業績は悪化します。社風は荒廃し、社員は退職してしまいます。

業績の大きく伸びた会社は、「自律型人材」が多くいました。
新しい事業や取り組みははじめようとすると
「面白そう」「メンバーに入れて欲しい」「業績がアップしそう」とワクワクしていれば、成功する確率は高くなります。

実際、上司が指示しなくても、DMを休眠顧客に送る社員やパンルレットを作って営業に出かけた社員もいました。

やれば成果がでますから、さらに仕事が面白くなって、イキイキと働くようになる好循環が生まれます。まさにこれが自律型人材です。

自律型人材の特徴は
・自分で責任をとる
・事実を事実として受け止める
・困難でも挑戦する
・他者利益を考える
・他人に関心を持つ
・会社・世の中に貢献する
などがあります。

依存型人材と自律型人材のどちらがいいのかは、明らかです。

大切なのは、どのようにして自律型人材を育てていくかです。

1つは、社長や経営幹部、上司がお手本になることです。
上がやらないでおいて、部下だけに強制してもやる訳がありません。

山本五十六の有名な言葉にも
「やって見せて、言って聞かせて、やらせて見て、ほめてやらねば、人は動かず。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」

日経の「私の履歴書」を読んでいると、同じようなことが書いてあります。
新入社員で入った時の課長が、その後社長になり、その影響を受けて、新入社員だった自分も社長になったと。

上司はいい意味でも、悪い意味でも部下に影響を与えています。

2つめは、仕事をする目的の本質をじっくりと考えることです。
仕事をしていると目先に追われて、仕事をすることの意味や本質を見失っていることがあります。

自分の生き様や価値観と仕事の価値を合わせてみると、本当の意味で仕事をする意味や目的がわかり、天職だと感じることさえあるのです。。

ある経営幹部の方はこんなことを話してくれました。
「私達が仕事をすることで、よろこんで下さるお客様がいらっしゃる。これが私達の幸せでもあるんです」

御社でも、自律型社員を増やしませんか?