「指示待ちの社員が多い」
「これ以上仕事量を増やしたくない」
「退職者が多い」

多くの経営者がこのような悩みを抱えているのではないでしょうか。

技術の進歩が激しく、経営環境も変化する現代では、従来のトップダウン型の経営では、迅速な意思決定が難しく、社員が成長する機会が減り、情報が一方通行になり、コミュニケーションが断絶することにもなり、組織の柔軟性も失われます。

これらのデメリットを考えると、企業がより自律的で柔軟な組織運営を目指すことが重要です。
そこで、経営者としての役割は、社員が自律的に考え、効率よく働ける環境を整えることです。
社員が自ら考え、行動する組織作りをすることで、効率的な業務遂行ができ、企業を成功に導きます。

社員が自ら考え、行動し、ともに育てあい、業績を伸ばしていくための自律型組織を作る「はじめの一歩」が、経営理念、ビジョン、行動指針を作成することです。

経営理念、ビジョン、行動指針の重要性

まず、経営理念、ビジョン、行動指針を定義することの大切さについて考えてみます。これらは企業の方向性を示し、社員全員が同じ目標に向かってベクトルを合わせるための指針となります。

経営理念

経営理念は、企業がなぜ存在するのか、何を目指しているのかを明確にするものです。

これは企業の根本的な価値観や使命を表し、すべての意思決定や行動の基盤となります。

明確な経営理念があれば、社員は日々の業務において迷わず、自律的に判断し行動するための基準になります。

ビジョン

ビジョンは、経営理念に基づき自社が将来どのような姿を目指すのか、または理想の姿を具体的に描いたものです。

社員にとっての目標となり、共通の目的意識を持つことで、チーム全体が一体感を持って働けるようになります。

また、経営者にとっても、社員にとっても、わくわくできるビジョンがあれば自律的に取り組む意欲が高まります。

行動指針(バリュー)

行動指針は、日々の業務において社員がどのように行動すべきかを具体的に示すものです。

これは経営理念とビジョンを実現するための道しるべとなり、社員に共通の価値観や仕事の進め方に対する基準ができます。

会社や経営者の価値観や仕事のやり方が伝わり、いちいち指示を仰がなくても自律的に働くことができ、よい企業文化が醸成されます。

MVVシートで社員と共有

経営理念、ビジョン、行動指針を社員と共有するには、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)シートを活用します。
MVVシートを使うことで、経営理念・ビジョン・行動指針の関連性がわかり、次のような重要な効果が期待できます。

1.価値観の共有

社員全員が経営者と同じ価値観を共有することができ、会社全体の方向性が統一されます。

これにより、各社員が個々の判断で行動する際も、基本的な価値観や考え方がわかり、一貫性が保たれるようになります。

2.自律性の向上

具体的な行動指針、仕事の進め方が示されることで、社員は指示を待つことなく、自ら考えで判断して、効率よく行動できるようになります。

これにより、業務効率が向上し、組織全体の生産性が高まります。

3.モチベーションの向上

明確なビジョンを持つことで、社員は自身の業務が会社全体の目標にどのように貢献しているかが理解できるようになります。

これにより、自己有用感とモチベーションが向上し、自律的な行動が促されます。

行動指針の作成と実践

経営理念やビジョンについては、すでにコラムで書いてきました。
では、どのようにして効果的な行動指針を作成し、実践に移すべきでしょうか。

1.経営者のリーダーシップ

行動指針を作成する際には、まず経営者自身がリーダーシップを発揮することが重要です。

経営者自らが経営理念やビジョンを明確にし、それに基づいて経営者の仕事に対する考え方や仕事のやり方などを行動指針として作成します。

そして、行動指針を考えた背景やストーリー、重要性などを社員に伝えることで、社員が共感しやすくなります。

2.社員の意見を取り入れる

行動指針の作成には、経営者の考えだけでなく、社員の意見や考えを取り入れることも大切です。

社員が自分たちの意見が反映されていると感じることで、行動指針への納得感が高まり、実践への意欲が増します。

3.定期的な振り返りと改善

行動指針は一度作成したら終わりではありません。

定期的に振り返りを行い、必要に応じて改善していくことが重要です。

社員との対話を重ねることで、現場のニーズに即した指針にブラッシュアップしていくことができます。

4.小冊子などにして全社員に配布

言葉だけでは重要なことも忘れてしまうことがあります。

経営理念・ビジョン・行動指針をMVVシートにまとめ、さらに経営戦略や戦略マップなどを1冊にまとめた小冊子やノートや手帳にまとめることで、社内に定着をしていきます。

5.行動指針の習慣化

MVVシートや小冊子を社員に配布しても、見返さない限りは定着しません。

ミーティングや会議の冒頭に読み合わせをする、朝礼で行動指針に基づいた行動をしたことを発表するなど、常に経営理念、ビジョン、行動指針を習慣化するための活動は必要です。

まとめ

経営理念、ビジョン、行動指針をまとめたMVVシートを活用することで、社員の自律性を高め、業務効率を向上させることができます。

これらを社員と共有することで、価値観の統一、仕事の進め方、自律性の向上、モチベーションの向上といった効果が期待できます。

そして、経営者、社員が共にイキイキと働きながら、成長し、会社の業績が伸びていきます。