ダイハツ工業の品質不正問題で、国土交通省は本社へ立ち入り検査に入りました。

第三者委員会の報告書では、「不正加工・調整」「虚偽記載」「元データ不正操作」が意図的になされていたと認定しています。

なぜこのようなことが品質不正問題で起こったのでしょうか?

品質不正問題の背景

製造業には「徹底的な改善」によるアプローチが多く見られます。技術的な問題や工程上の問題の解決や無理・無駄の排除を徹底的に行います。

また、市場や経営環境の変化に迅速に対応するために、短時間で課題を解決する仕組みを追求しています。

その結果、大きなリスクを伴う課題を解決するために忙しく働かなければならない現場が数多くある事も事実です。

さらに、問題なのは「出来て当たり前」と経営幹部が考えていることです。

もしも、上手くいかなかった場合には、上長から「なぜ出来ないんだ!」「なぜだ!」と叱責されてしまいます。

トヨタの5WHYに代表されるように、製品の不具合や問題点は、「なぜ」を繰り返すことで問題点を克服して、製品のレベルを上げてきました。

しかし、人や組織に「なぜ」を繰り返して「なぜできなかったんだ?」「どうしてなんだ?」「それで?」などと原因の追及をすると上手くはいきません。

人に対して原因追及をすると、自分が攻められているように感じ、自己防衛や言い訳に終始してしまいます。

また、原因追求した側とされた側には軋轢が生じ、部下は上司に面従腹背となり、人間関係は悪くなってしまうのです。

誰でも叱責されれば不快です。
叱責されないようにするために、問題がなかったようにしてしまうこともあります。

問題がなければ、叱責されませんし、評価が下がることもありません。

しかし、根本的な問題は隠れたままになって、なんの解決にもならないのです。

ダイハツの組織風土を考える

この不正の根っこには、出来て当たり前、認証試験に絶対に合格しなければならない、不合格は許されないという、長年社内で培われた組織風土が大きく影響していると考えられます。

ダイハツがものづくりの基本思想として掲げる「1ミリ、1グラム、1円、1秒にこだわったクルマづくり」というスローガンは本来顧客に対してのものだったのですが、いつの間にか会社のため、売上利益のために変わってしまうのはよくあるパターンです。

立派なスローガンがあっても、ノルマ、プレッシャーがあれば、目先の仕事に追われてしまいます。
どうしても短見に仕事をこなさざるを得なくなります。

これらを変えて行くには組織風土を変えていくことが必要です。

しかし「長年培ってきた組織風土はなかなか変えられない」と考えている方も多いのです。

そう考えてしまうのは、企業に蔓延する悪癖ばかりに目を向けているからではないでしょうか?

本当に悪癖だらけであれば、企業は存続していないはずです。

企業が続いてきたのは、良い点があったからに他なりません。
組織風土を変革するときには、良い点に目を向けて行くべきだと考えます。

思考と言葉を変える

組織風土は、企業に属する人間の思考と言葉に影響を与えます。
人間はプログラムが組み込まれた機械とは違います。
思考と言葉は変えられます。

スローガン、理念の原点に戻る

組織風土を変えて行くには、ものづくりの基本思想を、基本に立ち返って考えてみることがスタートです。

スローガンを活かしてお客様に貢献するには自分は何をすべきかを、考える時間を作ります。
それをグループ、部課、事業所、全社で共有します。

原点に立ち返るだけで、考え方は変わります。

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原因追求型思考と未来解決型思考

また、「なぜ出来ないんだ?!」という原因追求型思考が習慣になっていたとしても、変えることができます。

「なぜ出来ないんだ」ではなく、「どうしたら出来るようになる」と言葉を変えてみると思考が変わります。

出来ていないことの中にも、出来ていることは必ずあります。

90%出来ていても、残りの10%出来ていなければ、「なぜ出来なかった!」と叱責されてしまうと思えば、出来ない理由を探すか、出来ていないのに出来ていると報告をするなど、自分の責任を回避することだけを考えてしまいます。

しかし、40%でも出来ている部分があれば「どうして40%までは出来たのか?」と出来ている部分について焦点をあて、あとの60%について「どうしたら出来るようになる?」と未来解決型思考をすることで、「出来ることがありそう、出来るかもしれない」と発想がかわります。

発想が変われば、行動が変わり、行動が変われば、結果も変わります。

まとめ

問題を解決するのは「マイナスをゼロ」に戻すことで、企業として考えれば価値創出は出来ていないことになります。

企業が発展するためには「ゼロをプラス」にすることが価値を作り出すことになります。

原因追求型思考である「なぜ出来なかったんだ?!」は、思考を過去に引き戻すだけです。言い訳をする、もしくは出来なかったことを隠蔽することにしかなりません。

未来解決型思考である「どうしたらできる?」は未来志向であり、問題や課題を解決し、新しいアイデアを生み出します。

言葉と思考を変え、人と組織の良い面を見つけていくと、案外早く組織風土も変わっていくかもしれません。

大切なのは、組織を、会社を変えて行こうと皆がその可能性を信じることです。

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