社長や経営幹部としての役割が拡大するにつれ、忙しさは避けられないものとなります。
忙しいと精神的な余裕がなくなり、将来の戦略、組織、人材育成など本来取り組むべき重要な業務に取り組む時間も少なくなってしまいかねません。

本当に必要な仕事ですか?

忙しく仕事をしている時間の中には、必要のない作業であったり、部下に任せてもいい仕事をやっている可能性もあります。

本来の業務により多くの時間を充てるためには、現在どんな仕事をしているのかを精査する必要があります。

以前のベストセラー『気がつくと机がぐちゃぐちゃになっているあなたへ』の著者リズ・ダベンポート氏は、平均的なビジネスパーソンは探し物で年間150時間も浪費していると指摘しました。

文具メーカーのコクヨが調査したところによると、書類探しで年間80時間使っているようですから、書類以外の文具や名刺、ファイルやメールなどさまざまな探し物を加えると年間150時間を超える時間を探し物に費やしているのかもしれません。

忙しい原因がわかる時間の棚卸し

忙しさを解放するには、まずは忙しさの原因を突き止める必要があります。

業務時間内に、どんな仕事を、どれくらいの時間しているのかを明確にするには、時間の棚卸しをしてみることです。

時間の棚卸しは、業務の具体的な内容にどのような時間の使い方をしたのかを記録して、可視化することで忙しさの原因を把握します。

手順としては、行った業務の内容とその業務に要した時間を記録していきます。

時間の棚卸しの手順

1.準備

時間毎に記入できる携行可能な手帳やグーグルカレンダーを用意します。

グーグルカレンダーは、いつも持ち歩いているスマホで簡単に記入でき、業務の内容によって色分けができるため一目でどんな業務を行っているかがわかるのでおすすめです。

忙しさを解放する時間の棚卸し
時間毎に業務を記入できる手帳
忙しさを解放する時間の棚卸し
グーグルカレンダー

2.業務とそれに要した時間を記録

手帳やグーグルカレンダーに、業務内容とそれに要した時間を詳細に記入していきます。

書き忘れてしまうこともありますが、業務の区切りのときや休憩時間に毎日の業務とその時間を記録していきます。 1日だけではなく、まずは1週間続けて下さい。

3.業務と時間を整理

毎日記録した業務と時間を、それぞれの業務内容ごとに費やした時間を集計していきます。これをすることで、どの業務にどれだけの時間がかかっているのかが可視化できます。

そんな面倒なことはせずに、過去1週間の行動を振り返って記録すればいいんじゃないかと言われることもあります。

しかし、過去の行動を遡っても記憶がおぼろげだったり、忘れていたり、都合のいいように記憶を書き換えたりしていますので、正確に記録できません。

1週間では業務に偏りがある場合には、1ヶ月間記録をすることも必要です。

4.業務やムダな時間の使い方を洗い出す

それぞれの業務について同じような業務をグループ化し、1週間の所要時間を記録します。

その上で、社長や経営幹部がおこなった業務の優先順位を付けていきます。また、ムダな時間の使い方を洗い出します。

5.忙しさを解放する

業務の優先順位をつけたあとに、社長や経営幹部がすべき業務、部下や外注先に任せられる業務、不要な業務に分けます。

この仕分けをしていくと、本来社長がする戦略や組織作りの時間が少なく、部下に任せられる業務を社長や経営幹部がやっていたり、やらなくていい業務をやっていることが非常に多いのです。

まずは、部下に仕事を任せてしまえば、社長や経営幹部は、忙しさから解放されることになります。

これで、本来社長や経営幹部が担当すべき戦略や組織作りの時間が確保できます。

6.仕組みを変える

部下がすべき仕事を社長や経営幹部がやっているのは、組織として改善すべき点があることを教えてくれています。

仕組みに問題があるのであれば、仕組みを変えなければ社長や経営幹部が本来やるべきでない仕事をし続けることになってしまいます。

権限委譲ができていない、職務分掌が明確でないなどの組織の問題が浮き彫りになることもあります。

人材が育っていなければ、社員を教育しなければ、部下に仕事を任せられません。

なかでも、社長や経営幹部が好んで現場で仕事をしている場合は、仕組み作りとともに意識改革も必要になってきます。

まとめ

社長や経営幹部の時間の棚卸しをすることは、忙しさから解放するだけではありません。

時間を棚卸しすることで、社長や経営幹部に本来の業務に集中してもらうことができます。

時間の棚卸しをすることで最も大切なことは、組織や仕組みの課題が浮き彫りになり、解決へ向けての出発点になることです。

社長の忙しさを解放する最も有効な方法は、組織や仕組みなどの課題を解決することなのです。