部下を持つリーダーや経営幹部のマネジメント層には、共通の思い込みがあるのではないでしょうか?

それは「上司は部下をしっかりマネジメントしなければならない」という思い込みです。

この思いが強いと、細かなことまで報告をさせ、自分の思いどおりに部下が動かないとイライラしたり、ときには怒りがこみ上げて怒鳴ってしまうこともあります。

そのわりには、部下には慕われたい、嫌われたくない思いも強く持っています。

昨今は、叱って伸ばすよりも、褒めて伸ばすことの方がよいと考えている方も多く、褒め方教室に行ってスキルの習得に熱心です。

ところが、部下を褒めたからといって、やる気にならないケースも少なからずあります。

JR西日本が実施したアンケートの結果

負けず嫌いな部下ならば、叱った方が伸びるかもしれません。
では、褒めることで伸びるタイプの部下なのに、なぜ褒めてもやる気にならないのでしょうか?

そのヒントはJR西日本が実施したアンケートにあります。

2005年に起きたJR福知山線の脱線事故では多くの犠牲者が出ました。
再発防止のため、JR西日本では事故後に社内に安全研究所を設置し、運転士とその上司あわせて500人余りにアンケートを取りました。

その結果から、上司が部下をマネジメントをする上での大変大きな気づきがあったのです。

部下が工夫した点を上司に褒められた場合、作業への責任感が上昇し、反対に褒められなかった場合、責任感が低下する。

しかし、上司との関係が悪い場合は、褒められても責任感が低下する

いくら褒めても、上司と部下との関係性が悪ければ、褒めても逆効果にしかならないと言うことです。

ある部課長クラス対象のセミナーで「自分が部下だった頃、どんな上司は嫌いだったか?」を聞いたことがあります。そのときの回答で多かったのが下の項目です。

信頼されない上司像

・話を聞いてくれない
・責任転嫁をする(言い訳が多い)
・上司の顔ばかりを見て仕事している
・部下の手柄を自分の手柄にする
・自分のミスは部下のミスにする
・感情的になる(攻撃的)
・指示に一貫性がない

嫌われる上司の特徴をまとめると、自分は正しい、自分に従うのは当然、自分は出世したい、自分が可愛いなど、全てが「自分中心」になっています。

もしも、経営幹部やリーダーが「自分中心」であれば、どんなに褒めても部下は付いてきません。

部下は、上司の言動をよく見ています。どんなにスキルだけを勉強して、美辞麗句を言ってみたところで、本質は部下にすぐに見抜かれます。

「自分中心」の上司に褒められても責任感が低下するのですから、叱られようものならパワハラとして訴えられてしまうこともあり得ます。

そんなことになれば、企業のイメージダウンは避けられません。今後の採用活動にも大打撃です。

ところが、信頼している上司から、同じように叱られてもパワハラにはなりません。逆に叱ってくれたことに感謝すら覚えます。

信頼できる上司とは

・目指すゴール・方針を決定する
・部下を認めて、仕事任せている
・客観的に公平に部下を評価している
・部下の能力向上を真剣に考えている。
・会社の目的・目標に向かって真剣に取り組んでいる

「この人は真剣だ」「会社のこと、部下のことを真剣に考えてくれている」と思われるには、人間力を高めていくこと、言動を含めて心で言葉を語ることが大切なのです。