社長の苦悩
ある中小企業で、仕事は真面目にやっているものの、会社の方針に対して否定的な意見を述べることが多く、定時になると帰ってしまう社員がいた。
社長は、会社の方針に否定的で、協力的でないこの社員の扱いに頭を悩ませる日々が続いた。
彼とのコミュニケーションも遠慮がちになり、対応に苦慮していた。
そこで、知り合いのコンサルタントに相談することにした。
第三者からの提案
コンサルタントは社長に意見を聴いたが、一方からの意見だけでは本当のことがわからないと思い、その社員と面談をさせて欲しいと社長に依頼をした。
社長からコンサルタントとの面談を提案されると、拒否されることもある。そのため、幹部社員を含めて数人と個別に面談をすることになった。
話した内容は社長に伝わるため、本音を言わないことも多いが、この社員は会社のよい点、問題点、改善案を論理的に話してくれた。
この面談で、コンサルタントが会社員だった頃の自分によく似ていると感じた。
彼には、もっと会社をよくできるのになぜしないのか、自分の能力をなぜ認めない、もっと重用すれば会社をよくできる、と社長が自分を十分に評価してくれていないことに不満があった。それが、批判という形で態度に出てしまっていた。
要するに、彼の自己重要感が満たされていないのではないかと考えた。
面接を通して彼の能力の高さは理解できた。そして、彼のいるべき場所もわかった。
面接の結果を社長に報告したところ、社長はしばらく考えてから、「あなたは、どうしたらいいと思う」と尋ねた。
サブリーダーへの抜擢
「彼の意見は否定的で非協力的なこともありますが、本心では会社を良くしたいという強い思いがあります。彼は客観的に物事をみることに優れており、論理的な思考力も能力も高いです。
思い切って彼を今進めているプロジェクトのリーダーにしてみてはどうでしょうか?
そうすることで、彼の意見を建設的に活かす機会が生まれるかもしれません」
しかし、社長はすぐにその提案を受け入れることにためらいを感じた。批判的な態度が改まらないままで、彼にリーダーの役割を任せるのはリスクがあると考えた。
そこで、コンサルタントは、「リーダーではなく、サブリーダーとして起用して、様子を見ることにしてはいかがでしょうか?」と提案した。
サブリーダーに指名された社員は、最初はそれを受けることを躊躇していた。彼がいままで批判的だったため、サブリーダーとして責任を持つことに驚きを感じた。しかし、彼はしぶしぶ受けた感じがしていたが、「やっと評価された」と感じたことが表情にも若干ではあるが出ていたことを見逃さなかった。
批判から建設的なリーダーへ
サブリーダーとしての活動は始まったばかりだが、彼は日常の業務にも積極的に取り組むようになっていた。
プロジェクトのミーティングのとき、彼に、問題点は問題点としてしてきし、その後には会社の成長を促進するための建設的な意見を述べるようになった。
社長も、彼をプロジェクトのサブリータにしたことに満足をしていた。また、彼とのコミュニケーションもよくなり、建設的な意見のやりとりができるようになった。
彼は批判的な扱いにくい社員ではなく、会社に必要なリーダーとして歩み始めた。
社長の収穫
この経験を通じて、社長は大きな収穫を得た。
批判的な意見を言社員が、単なる反抗的な問題児なのか、会社をよくしようとの思いがあるのに上手く表現できない隠れた有能な社員なのかを見極める必要がある。
批判的な社員を一概に遠ざけるのではなく、彼らの意見に耳を傾け、成長の機会を提供することで、会社は新たな可能性を見出すことができる。 そして、隠れた有能な社員には、適切なチャンスを与えることで、社員の潜在能力を引き出すことができる。
批判は必ずしも敵意や反発の表れではなく、企業をより良くしたいという思いから生まれることもある。