「あるセミナーで、存在意義を見直して会社の業績が伸びた社長の話を聞きました。私の会社でも存在意義を見直してみようと思うんですがいかがでしょうか?」
これは、コロナ禍で打撃を受けた会社の社長からの相談でした。

パーパス(存在意義)を考える2つの視点

このところ、日本経済新聞でもパーパス(会社の存在意義)について、多く取り上げられています。

個々人の価値観が多様になる中、会社の存在意義を明確にすることは、ベクトルを同じにするためも社会に貢献していくためにもとても重要です。

存在意義を明らかにするには、2つの視点が必要になると社長にはお答えしました。

1つめが、自社が何をすべきか、自社の価値は何かなど、自社の強みや独自性を問い直すことです。

2つめは、自社は社会にとってどんな存在なのか、社会に対して何ができるかを考えます。


自社の視点と社会からの視点の2つがあって初めて自社の存在意義が明確になります。

存在意義が明らかになれば、社会・顧客・取引先・従業員に統一感のあるメッセージを発信出来るようになります。

パーパス(存在意義)を考える3つの自社視点

1.創業時から現在までの歴史を振り返る

創業したときの志を今一度確認をし、創業から、何を、どのように、誰に提供してきたのか、時代時代で売れてきた要因を調べていきます。
すると、会社に流れている考え方や社会や顧客に提供してきた価値を知ることができます。

会社の歴史を知ることで、これからの会社経営において自社の強みや独自性を知るための大きなヒントになります。
また、現在の経営理念についての社長の考えや思い、何のために経営をしているのかについても改めて見つめ直します。

2.強み・独自性・競争優位性を知る

現在経営ができているのは、顧客に支持されているからです。
その理由こそが、自社の強みであり、競争優位性です。

具体的には、商品・サービス、マーケティング、独自技術、人的ネットワーク、地域密着性、顧客とのコミュニケーション、特許、仕組み、システム、社員の能力、採用力、社員定着率、教育体系など様々な要因が考えられます。

自社の強み・独自性・競争優位性を確認するためには、3つの方法があります。

自社が自覚している強み

ホームページやパンフレットなどのマーケティングツール、営業先で顧客に訴求している強み・独自性は、すでに自社で把握しているものです。今一度詳らかにすることで、自社の強みを確認します。

顧客から見た自社の魅力

客観的に自社の強みを理解しているのは顧客や取引先です。そこで、顧客や取引先に直接、自社の魅力や強みをインタビューします。「品質がよい」と顧客が答えてくれただけでは本当の強みはわかりません。

さらに具体的な理由を掘り下げてインタビューすることで自社の強み・独自性・競争優位性がわかってきます。

従業員が知っている魅力

自社が理解している強みとは違った視点で従業員は会社の長所や短所を見ています。従業員にインタビューすることで、会社が自覚している強みとは違った意見がでてくることも多々あります。

また、従業員に目的を明確に伝えることで、経営に関わっているという意識も生まれます。

3.大切にしている価値観・企業文化

企業文化は、社長をはじめとした社員の価値観の集合体であり、その会社の考え方や行動のパターンです。売上や利益、採用や定着率には企業文化が大きく影響をしています。

新しいことに挑戦する組織風土があればこれも大きな強みになります。

パーパス(存在意義)を考える3つの社会視点

1.社会課題

自社に関連する社会課題は調査します。
自社が社会に対してどのように貢献していくかを考えたときには、社会課題を解決することもパーパスを考える上では重要です。

SGDsもその一つで、海産物を扱っている会社が、海洋資源を守るために何ができるかを考えるのは社会から受け入れられるためには大切な要素となります。

2.生活者の価値観

世の中の価値観は常に変化しています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の浸透、消費の二極化、新品からリユース・消費からサブスクリプションへの変化、電子マネー、ライフワークバランス、LGBTQ、同性婚など、生活者の意識の変化には、どんな事象があって、どんな背景があるかを調べておく必要があります。

3.政策・法令・規制

企業の存在価値(パーパス)を維持し、適切な企業活動をするためには、法令遵守(コンプライアンス)は絶対条件です。

法令遵守をしなかったがために、会社の信用が失墜し、倒産に追い込まれるケースもあります。法令を遵守することで、社会からも信頼される企業になります。

パーパス

パーパス経営を推進するには

自社の視点と社会からの視点の2つで考察ができたら、パーパス(存在意義)を言語化します。

中小企業であれば、全従業員でパーパスを考えるワークショップを行えば、全社にパーパスを浸透させることができます。
経営幹部や一部の社員で言語化した場合は、全社員へ浸透させるためにグループ単位でワークショップをします。

そして、パーパスにもとづいた経営戦略、経営計画を策定して、パーパスにもとづいた経営をし、通常業務に中にもパーパスを浸透させていきます。

経営戦略、経営計画を策定する際に留意することがあります。

パーパス経営とは、自社の強みを活かし、自社の利益を上げながら、社会課題を解決することです。

まとめ

存在意義を見つめ直していくと、自社の強みや競争優位性がより明確になります。
また、経営理念を見直すいい機会でもあります。

さらに、従業員も含めてパーパス(存在意義)を考える機会を設ければ、経営参画ができ、自分で考えて行動できる「自律型組織」を作る上でも大きな効果があります。

顧客をはじめ利害関係者、社会に対しても統一したイメージで発信できるようになり、ブランドイメージも伝えやすくなります。

ミレニアル世代(1980年~1995年生まれ)やZ世代(1996年から2015年生まれ)は、ネット環境が整備された中で育っているため、様々な情報触れており、社会貢献に関心が高く、若手の優秀な社員からの支持も得やすくなり、若い世代からのイノベーションも起こりやすくなります。