業績が好調な顧問先の多くでは、会社に本がたくさんあります。
階段の壁面のスペースに本が並んでいる会社もあれば、食堂や休憩室に本棚を置いてある会社もあります。

本棚には、社長や役員が読んだ本の中から社員にも読んで欲しいと思った本があったり、新聞広告で紹介された本を会社で購入した本などが並んでいます。

バリエーションも、経営関連の本、業界に関連した実務書、自己啓発本、小説や歴史の本などとても豊富です。

平成25年(2013年)文化庁の国語に関する世論調査では、マンガや雑誌を除く1カ月の読書量は、

・読まない 47.5%
・1~2冊 34.5%
・3~4冊 10.9%
・5~6冊  3.4%
・7冊以上  3.6%
でした。

スマホやネットで情報を得ているのでしょうが、1冊も本を読まない人が約半数いたことになります。

御社の社員さんたちは、1ヶ月にどれくらい本を読んでいるでしょうか?

あるご支援先で読書量を聞いたところ、60%の社員が月に1冊も本を読んでいないことがわかりました。

ネットからの情報もいいのですが、本を読むことにはそれ以上の価値があるのです。

・本を読むことで、自分の知らない世界を垣間見ることができます。
・それだけ視野が広くなり、考え方の幅も広がっていきます。
・本を読めば、文字をイメージに変える想像力もついてきます。
・本には、起承転結があり、問題提起から結論まで理論立てて理解できる能力がつきます。

こんなに素晴らしい価値があるのに本を読まないのはもったいないのです。

ご支援先の社長に「社員の皆さんにも読書の習慣をつけてみませんか?」と提案をしました。

「でも、本を読まない社員に、本を読めといっても読まないですよ」と
本を読むことはいいことだけれども、実践するのは難しいと社長に言われました。

「では読書感想文を書いてもらいましょう!」と再提案をすると
「先生、本を読まないのに、その上レポート(感想文)だなんて無理ですよ」と社長に呆れられてしまいました。

「本を最初から最後まで、丸々1冊を読まなくてもいいんです。気になった章だけを読むことからはじめれば充分です」と申し上げると、社長も関心を少し示してくれました。

「レポート(感想文)と言っても、読んだ章の要約でもいいんです。2行だけでもいいじゃないですか。まずは本に親しむことが大切です」、これで社長も乗り気になってくれました。

はじめは、なるべく分量の少ない、文字の小さすぎない本を選んで、社員に配りました。

社員の皆さんは、「なんで本読んで、感想文を書くの?」「小学生じゃあないんだからさ!」といかにも嫌そうな表情です。

社長は読書のメリットを伝えると共に「社長だけでなく、社員のみんなが勉強をしてこそ会社は伸びていくんだ」と熱く語ったのでした。

それから1ヶ月後、レポート(感想文)の提出日を社長は楽しみにしていました。

たった3行の感想文もありました。ぎっちりと書かれたレポートもありました。
中には自分の担当部署をよくするための改善案が書いてあるレポートもあり、社長は月1冊の読書を続けようと決意したのです。

そして、レポート(感想文)に社長または上司がポジティブなメッセージを書いて戻していたことが読書を継続をする大きなポイントになりました。

「本を読め」だけでは、読書は続きません。読書をしたことを承認することが、読書が習慣となるためには必要なのです。

以前は社長の机の背面以外には本がなかったこの会社も、今では何本も本棚が置いてあります。