「なかなか人が採用できない」と困っている会社が増えてきました。なかには「エージェントに高い費用を払って採用できても、すぐに辞めてしまう」と嘆いている社長もいます。
人材採用は中小企業では喫緊の課題です。
人材を獲得することはもちろんですが、せっかく採用した人材を定着させることも会社にとって採用と並ぶ重要な課題となっています。
そこで今回は、離職率を下げるコミュニケーション戦略について8つのポイントをご紹介します。
1.入社前からのコミュニケーションを大切にする
入社しようと考えている会社のホームページは必ずチェックしています。
この段階で、経営理念やビジョン、仕事内容などをしっかりと伝えておくことに加えて、採用面接や内定前研修でも、これらのことに加えて、働くとはどういうことなのかという仕事観などを伝えて、同意させておくことが必要です。
入社前からコミュニケーションを取ることで、入社後のミスマッチを防ぎ、スムーズな職場への適応を促します。
2.双方向のコミュニケーションを促進する
上司と部下の話し合いでは、上司が話す割合が7~8割になっているケースが多いようです。
上司としては、部下に成長して欲しいとの思いから伝えたいことがたくさんあるのだと思います。
しかし、部下からすれば、それが上司からの押しつけに感じてしまいます。
部下は上司に自分の考えを聞いて欲しいと思っています。
上司が話を聞いてくれることは、自分を承認してくれていることにもつながるからです。
上司からの部下への一方的なコミュニケーションではなく、話す割合を逆転させて、部下が7~8割、上司は2~3割にするだけで、部下のやる気は上がります。
そのためには、上司が本当の意味での傾聴力を身につけることが必要です。
傾聴力をもった上司がいれば、部下が安心して意見を言えるようになり、社内は活性化し、離職率は低下します。
3.適切なフィードバックを与える
毎日終業後5分間、毎週15分間、毎月30分など、社員一人ひとりと定期的な面談を通して、仕事で上手くいったこと、支援して欲しいことなどを部下から傾聴し、その上で丁寧なフィードバックを与えると社員の成長につながっていきます。
そのためには、上司は部下のことをよく観ている必要があります。
具体的な行動や成果に基づいたフィードバックは、上司と部下との信頼関係の向上にもつながります。
気に掛けてもらっていると思えば、この会社でがんばろうと思います。
4.積極的な情報共有
経営理念、ビジョンは定期的に社員と共有し、経営状況や経営数字も四半期ごとの経営計画発表会でつつみ隠さず社員に公開します。
経営数値を公開することをためらう社長もいますが、オープンにすることで社員を信頼している証拠にもなります。また、会社の状況が理解できているからこそ、社員も状況を考えた上での提案や発言をすることができるのです。
会社全体の情報を定期的に共有することで、会社の一体感を高め、組織へのコミットメントを促進します。
5.従業員のキャリア支援
業務別役割表や昇給に関係した等級別職務内容を作成し、社員が何をすれば成長できるのかを明確にします。
そのための研修制度やキャリアパス制度などを整備し、キャリア形成を支援することで、社員が人生設計できるようにして、将来への安心感を与え、離職を防ぎます。
評価制度や処遇、給料に関する規定を作成することも必要です。
6.従業員同士のコミュニケーションを活性化する
社員同士のコミュニケーションの活性化のベースは、お互いが認め合うことです。
できていないところを指摘するのではなく、できているところやがんばっているところを認め合うことで、社員の自信が高まり、新しいことに挑戦したり、困難な課題に取り組んだりする意欲が高くなります。
さらに、組織内の雰囲気がよくなり、チームワークが向上し、目標達成に向けて協力し、より良い成果を生み出すことができます。
コミュニケーションを活性化するための、コミュニケーション・ワークショップを開催することも有効です。
7.感謝の気持ちを伝える
仕事だからやって当たり前ではなく、日々の業務や成果に対して、「ありがとう」を伝え、感謝の気持ちを表現することで、社内の関係性はよくなり、モチベーション向上につながります。
簡単にできることを、確実に行うことで社内の雰囲気は良くなります。
中でも役職上位者が率先してやってこそ、社内は活気に満ちあふれます。
8.ハラスメント対策を徹底する
パワハラ、マタハラなどハラスメントは離職の大きな原因となります。
ハラスメントが起きる原因の1つに、仕事をしていると、熱が入るあまり、不用意な高圧的な言動をしてしまうことがあります。
また、相手を人として認めていない、自分の思い通りにしたい、このようなこともハラスメントが起きる原因でもあります。
ハラスメントを防止するためには、研修などを定期的に開催し、ハラスメントのない職場環境づくりを徹底する必要があります。
まとめ
この8つのコミュニケーション戦略を効果的に実行することで、社員一人ひとりが、自分が会社にいてもいい、会社に貢献している、仲間にも認められていると感じ、仕事にやりがいが持て、将来のこともイメージできるため離職率が低下します。
全部いっぺんにやらなくても、一つずつできるところから実行することで、離職率は低下していきます。