「このままで今月の目標を達成できるのか?」と営業担当の役員が、部下の社員を叱責しています。
社員自身も営業目標を達成することが難しいことはわかっているので、営業会議の席では小さくならざるを得ません。その上さらに、上司から責められては「すいません」と謝る以外に方法はないのです。
この社員は決してサボっている訳ではありません。
でも「なぜできない?!」と攻められれば、謝ってしまうか、もしくは自己保身のために「競合他社に勝てません」「不景気で難しい状況です」と言い訳をするしかなくなってしまいます。
営業担当役員からすれば、営業目標を達成できない社員を不満に思うでしょう。
しかし、叱責をしたところで、営業目標を達成できる訳でもなく、単に営業担当役員の感情をストレートに社員にぶつけただけのことです。
役員はこれでイライラした感情が一時的に解消されるかもしれませんが、会社にとっても、社員にとっても決してよい事ではありません。
以前は多くの会社は「できて当たり前」「できないところを叱って直す」そんな企業文化が多かったように思います。
役員が若い頃には、「契約が取れるまで帰ってくるな」「100件飛び込み営業をしてこい」など、厳しく指導されてきました。
厳しい指導のおかげで、よい実績を出せたと思っているために、社員達にも同じような指導をします。
しかし、役員が若かった頃とは、社員の価値観も変わってきています。また、根性論や非効率な営業にも拒否反応を示します。
一部の社員には厳しい指導も有効かもしれませんが、それが原因で辞めていった社員もこの会社には相当数いました。
何度も言って聞かせたことが、できなければ役員としてはイラッとします。
でも、全く結果が出てない訳ではないのです。
目標に対して100%でないだけで、成果がゼロではありません。
成果が出た点を評価するだけで、部下のやる気は変わってきます。
営業目標が達成できない可能性が高いとしても、
成果が出た事例について
「どんなアプローチをして新規の会社とアポイントを取ったのか?」
「営業が上手くいった会社とはどんな商談をしたのか?」
「契約が成立した業種や規模などの共通点は?」
などを質問していき、営業成績を出していくためには、どうしたらよいのかを社員である部下に考えさせる方が結果はついてきます。
さらに、社員の気づきも増えて成長を促すことができ、モチベーションもアップしました。
できないことに注目して、「なぜだ?!(WHY)」とその原因を追及しても、言い訳と謝罪に終始するだけで、何も変わりません。
それよりも、できたことを認め、よいところを強化し、「どうしたらできる?(HOW)」と未来思考で考えさせるほうが、いい結果に繋がりました。
「なぜできない!」という原因追求型では「この会社に、いてはいけない」と疎外感を覚えてしまい、退職に繋がっていきます。
「どうしたらできる?」という未来思考なら「上司は、自分の事を考えてくれている」と感じ、「この会社に受け入れられている。もっと頑張ろう」と気持ちも前向きになっていきます。
未来思考は、社員に対する指導や教育に非常に有効な考え方です。
ただ、仕組みや機械については「なぜ、こうなったのか?」WHYを重ねることで原因がわかり、改善できますから、使い分けは必要です。
原因追求型から未来思考型の企業文化に変えていくと、社内の関係性は格段によくなります。
関係性がよくなれば、報連相も活発になり、社員間での助け合いも増えてきます。
もちろん、業績もアップしました。
未来思考型の企業文化に変えていくためには、何より社長をはじめ経営幹部、管理職の考え方を変える必要があります。
そのためには、自分の思考を見直す訓練や研修も必要です。それでも、この研修や訓練の費用対効果は抜群に良いものです。
社員の定着率もアップし、売上利益も伸びて行き、その上社長をはじめ幹部のストレスも随分と減りました。
あなたの会社は、原因追求型ですか?未来思考型ですか?