指示待ちの要因

「社長、これどうしたらいいですか?」

社員から聞かれれば、社長は答えます。

これまでの経験から、すぐに答えが浮かぶことも多いでしょう。

「それなら、こうすればいい」

「まず、これをやってみよう」

その方が仕事は早く進みます。

しかし、それを繰り返していると、社員は自分で考えるよりも、社長に聞いた方が早いと考えるようになります。

そして、何かあるたびに、

「社長、どうしますか?」

と聞いてきます。

その社員に、

「それくらい自分で考えてくれ」

と言っても、なかなか変わりません。
社長が答えを出し続けることで、指示待ち社員をつくる原因の一つになっているのです。

社員に、あえて聞く

社員から、

「どうしたらいいですか?」

と聞かれたら、すぐに答えず、

「あなたは、どう思う?」

と聞いてみます。

社長が答えを知っていても、知らなくても同じです。

「あなたなら、どうする?」

「ほかに方法はないかな?」

「現場では、どう考えている?」

最初は「分かりません」と返ってくるかもしれません。

そんなときも、

「どこまで考えた?」

「まず何からやる?」

と、もう一度聞いてみます。

大切なのは、正解を言わせることではありません。社員自身に考えてもらうことです。

答えよりも、考え方を聞く

社員に聞くことには、もう一つ大切な意味があります。

その社員がどのように考えているのかが分かることです。

例えば、お客様からクレームがあったとします。

社員が、

「社長、どう対応しますか?」

と聞いてきたとき、

「すぐに謝罪して、こう対応して」

と答えれば、その問題は早く解決するかもしれません。

しかし、

「あなたなら、どう対応する?」

と聞けば、その社員が何を大切にして判断しているのかが見えてきます。

お客様の話をまず聞こうとするのか。

原因を確認しようとするのか。

すぐに値引きや返金で解決しようとするのか。

同じ問題でも、社員によって考え方は違います。

さらに、

「なぜ、そうした方がいいと思ったの?」

と聞けば、その社員の判断基準まで見えてきます。

社員が自分で判断して行動するためには、単に「自分で考えなさい」と言うだけでは十分ではありません。

会社として何を大切にするのか。

お客様に対して、どのように向き合うのか。

どのような基準で判断するのか。

社員の答えを聞くことで、そうした判断基準がどこまで共有されているのかも分かります。

違っていても、否定しない

ここでもう一つ大切なことがあります。

せっかく、

「あなたはどう思う?」

と聞いても、社員が答えた瞬間に、

「いや、それは違う」

「そんなやり方ではダメだ」

と否定してしまったらどうでしょう。

社員は、

「どうせ社長の中では答えが決まっている」

と思います。

そして次からは、自分の考えを言わなくなります。

社員の答えが自分の考えと違っていても、まず聞く。

「なぜ、そう考えたの?」

「そうすると、どうなると思う?」

と、その考えに至った理由まで聞いてみます。

話を聞いていくうちに、社員自身が、

「やっぱり、この方法ではうまくいかないかもしれません」

と気づくこともあります。

反対に、社長の方が、

「その考えの方がいいな」

と気づくこともあるでしょう。

聞くということは、社長が社員から答えをもらうだけではありません。

お互いの考えを深めることでもあるのです。

社員の中には、社長が知らないことがある

社長は会社全体を見ています。

しかし、会社のすべてを見ているわけではありません。

お客様と毎日接している社員だから分かることがあります。

製造現場にいる社員だから気づくことがあります。

若い社員だから知っていることもあります。

社員同士だから聞こえてくる声もあります。

社長が先に、

「こうすればいい」

と言ってしまえば、そうした情報や意見が出てこないことがあります。

だから、答えを知っていても、あえて聞く。

知らないことなら、なおさら聞く。

社員に聞くことは、社員を育てるためだけではありません。

社長一人では見えないものを、経営に取り込むことにもつながります。

最後は、責任は社長が持つ

もちろん、社員の意見をすべて採用する必要はありません。

社員の意見を聞いたうえで、社長が最初に考えていた方法を選ぶこともあります。

社員の提案を採用することもあります。

社員に任せることもあります。

社員に聞くことと、社員任せにすることは違います。

意見を聞き、必要な判断をし、その結果に責任を持つ。

それは社長の仕事です。

社員が自ら考えて動く会社をつくるためにも、社員の意見を活用するためにも、社員に聞くことには意味があります。

次に社員から、

「社長、どうしたらいいですか?」

と聞かれたら、すぐに答えを言う前に、一度こう聞いてみてはいかがでしょうか。

「あなたは、どう思う?」