「何度、同じことを言わせるんだ」
部下の報告を聞いた瞬間、思わず強い口調で言ってしまう。
その場では、部下のために厳しく指導したつもりかもしれません。
しかし、怒られた部下の頭に残るのは、仕事の改善点よりも「また怒られるかもしれない」という不安です。
このようなことが続くと、部下は上司の顔色をうかがうようになります。
問題が起きてもすぐに報告しない。会議で意見を求めても発言しない。新しいことに挑戦しない。
そして社長や管理職は、「うちの社員は、自分で考えて動かない」と感じるようになります。
しかし、社員が動かない原因は、本人の意欲だけにあるとは限りません。
上司の怒りが、社員の行動を止めていることもあります。
怒れば、部下が動くように見える
強く叱れば、部下はすぐに動きます。
「今日中にやれ」と怒鳴れば、その仕事は終わるかもしれません。
そのため、怒ることには効果があるように見えます。
ところが、部下が動いた理由は、仕事の目的を理解したからではありません。
怒られたくないから動いただけです。
これを繰り返すと、部下の判断基準は「会社にとって何がよいか」ではなく、「どうすれば上司に怒られないか」に変わっていきます。
言われたことだけをする。余計な提案はしない。
失敗しそうな仕事には手を挙げない。悪い報告ほど後回しにする。
瞬間的な怒りは、一つのミスを正すことはできても、社員が自ら考えて行動する力を奪ってしまうことがあるのです。
瞬間湯沸かし器型の怒りは、なぜ起きるのか
怒りがわき上がるときには、自分が大切にしている価値観や「こうあるべきだ」という考えが関係しています。
「約束した期限は守るべきだ」
「部下は上司の指示に従うべきだ」
「仕事は完璧に仕上げるべきだ」
これらの考え自体が悪いわけではありません。
責任を持って仕事をしてきた経営者や管理職ほど、仕事に対する基準を強く持っています。
ただし、自分の基準と違う行動を見た瞬間に、「やる気がない」「無責任だ」と決めつければ、怒りのスイッチが入ります。
例えば、部下が期限に遅れたのは、仕事を軽く考えていたからではなく、優先順位を理解していなかったのかもしれません。
仕事の進め方が分からず、相談するタイミングを逃した可能性もあります。
事情を確認する前に怒ってしまうと、本当の原因は分かりません。その結果、同じ問題が繰り返されます。
怒りを抑えるための三つの方法
1.怒っている自分を客観的に見る
怒りを感じたら、すぐに言葉を返さず、「いま、自分は怒っている」と心の中で確認します。
怒りを無理に消そうとする必要はありません。
自分の状態に気づくだけでも、感情と行動の間に少し間をつくることができます。
その場で冷静に話せないときは、「少し整理してから話そう」と伝え、いったん時間を置くことも必要です。
2.自分の怒りのスイッチを知る
どのような場面で怒ったのかを書き留めてみます。
- 何が起きたのか
- 相手のどの言葉や行動に反応したのか
- 自分は本来、どうしてほしかったのか
- 自分には、どのような「こうあるべきだ」があったのか
何度か記録すると、自分が反応しやすい共通点が見えてきます。
怒りの原因が相手の行動だけでなく、自分の期待や思い込みにもあると分かれば、反射的に怒ることは減っていきます。
3.叱る前に、事実を聞く
問題が起きたときには、最初から答えを決めつけず、次のように質問します。
「何が起きたのですか」
「どこで進まなくなったのですか」
「次は、どうすればよいと思いますか」
これは、ミスを見逃すことではありません。
必要な指導や注意は行います。ただし、感情をぶつけることと、改善を求めることは別です。
事実と原因を確認してから、次の行動を一緒に考える。
そうすれば、部下は怒られないためではなく、仕事を改善するために考えられるようになります。
怒らないだけでは、組織は変わらない
経営者や管理職が怒りを抑えることは大切です。
しかし、それだけで社員が自ら動く組織になるわけではありません。
社員が安心して報告や提案ができる関係をつくり、仕事を任せる範囲や判断基準を明確にする必要があります。
挑戦した結果の失敗と、確認を怠った失敗を同じように扱わない評価の仕組みも必要です。
つまり、個人の感情管理だけでなく、上司と部下の関係性、仕事の任せ方、会議や評価の仕組みまで整えることが必要なのです。
部下が何も言わない。指示を待っている。問題が起きても報告が遅い。
そのような状態があるなら、社員の意欲を問う前に、管理職がどのような反応をしているかを振り返ってみてください。
社員は、安心して悪い報告をできているでしょうか。
会議で違う意見を言えるでしょうか。
失敗したときに、原因と次の行動を一緒に考えているでしょうか。
上司の関わり方が変われば、社員の反応も変わります。
管理職の関わり方を、職場で実践できる形に変える
株式会社マクウェルエンパワーでは、経営者・管理職を対象に、傾聴、承認、解決思考を実際の職場で使える形で身につける研修を行っています。
一方的に知識を伝える研修ではありません。職場で起きている場面を取り上げ、ロールプレイや対話を通じて、部下の主体性を引き出す関わり方を実践的に学びます。
「部下に強く言わなければ動かない」
「会議で意見が出ない」
「管理職によって部下への関わり方が違う」
「ハラスメントを防ぎながら、必要な指導はできるようにしたい」
このような課題がある企業には、リーダー研修やワークショップ型ハラスメント防止研修をご提案しています。
研修を実施することが目的ではありません。
管理職の関わり方を変え、社員が安心して報告・提案し、自ら考えて動ける組織をつくることが目的です。
自社の場合は、どこから変えればよいのか。まずは現在の状況をお聞かせください。


