指示待ち社員が多くなる理由
「最近は指示したことしかしない社員が増えています。特に20歳代の社員が多いんです」とセミナーに参加していただいた経営者がおっしゃっていました。
経営者の皆様からは、指示待ち社員が多いという声は、非常に多く頂いています。
これにはいろいろな要因があります。
以前に書いたコラム「指示待ち社員の量産をくい止める」では、経営者・管理者側からの原因について書きました。
もちろんそれだけではなく、指示待ち社員の側にも原因があります。
20歳代の指示待ち社員が増えている背景には、育ってきた環境も無視できません。
一つには、ゆとり教育の弊害があります。
「運動会で順位をつけないなんて考えられません」とおっしゃる経営者の方もいらっしゃいます。
社会に出れば競争は当たり前なのに「みんなと一緒」なんてことをするから、自分だけが違ったことをすると周囲の人から「なにを言われるかわからない」と批判されるのを恐れます。
このような環境下では、自分で考えて行動するよりも、上からの指示に従ってみんなと同じことをしていた方がいいと考えるようになっても仕方がありません。
また、ゆとり教育では個性を伸ばすことを重視するため、教師が生徒を叱ったり注意したりすることがなく、叱られることへの免疫が低下しています。
社会に出れば叱られることもありますが、叱られるのを恐れて自分からは行動しない傾向にある人が多くなっています。
さらには、教師に従順に従っていれば評価は高くなるため、自分で考えるよりも指示に従っていた方が自分にメリットがあったためです。
二つには、家庭環境があります。
昭和の雷親父から、叱らない子育てが脚光を浴び、友だち親子が増えてきました。
そのため本来は叱らなければいけないところを叱らず、家庭でも叱られる経験が少なくなっていました。
子どもの数も少ないために、親が子に手を掛けられるようになり、何から何まで与えられようになれば、自分で決めなくても、考えて行動しなくても受け身でいる方が楽なのです。
就職先にしても自分だけで決められないため、親のための就職説明会などが開かれるのはそのいい例だと思われます。
自分で決めなければ失敗をしても、その責任を他人に押しつけることができ自分は傷つかずにすみます。
このように親の言うとおり、教師の指示に従っていれば、自分はいい子でいられ、自分を傷つけずにいられるために、受け身で過ごすことが当たり前になってしまっています。
指示待ちから自律型への転換
指示待ち社員ではなく、自分で考えて行動する自律型人材になるためにはそのようにすればいいでしょうか?
本来、人間は理念や将来のビジョンがしっかりしていて、ある程度の裁量が与えられていれば、自分で考えて動くようになります。
しかし、いきなり裁量を与えても、経験がなければ何をやっていいのかわからず途方に暮れてしまうだけです。
いままでの人生は指示待ちで何不自由なく生きてこられたために、指示されることが当たり前だと意識ではなく、無意識的に判断し、行動してきました
指示をしてもらって、動く方が楽なのです。
そのため指示をされたことに対して、自分自身が、どんな考え方や感情で行動をしているのかを知る必要があります。
自律型人材を育成するには、今まで生きてきてどんな出来事があって、そのときどきに嬉しかったこと、悲しかったこと、悔しかったこと、淋しかったことなど、どんな感情があったのかをじっくり思い出してもらいます。
今までの思考と行動が現在の自分を創っていていますから、過去を振り返ることで大きな気づきが得られます。
趣味でも、クラブ活動でも、アルバイトでも、何でもいいので、自分が一生懸命に頑張ってきたことがあれば、自律型人材になれる条件を持っています。
一生懸命だったときの気持ちは、仕事にも充分活きてきます。
さらに別の機会を設けて、なぜ仕事するのかなど、仕事の意義を考えていきます。
個人はもちろんのこと、グループワークも効果があります。
教育のベースは、考え方や仕事に対する姿勢です。
ここがしっかりしていないと、いくら仕事のやり方やルールを知っていても、専門知識やスキルがあっても、能力が充分発揮できることができません。
だからこそ、ベースで考え方や仕事に対する姿勢を教育していくことが必要なのです。