「研修には行かせています」
経営者の方と話していると、この言葉を本当によく耳にします。しかも、多くの場合、そのあとに続くのはこうした本音です。
「ただ、正直なところ、あまり現場は変わっていないんです」
「その場では盛り上がるんですが、結局もとに戻ってしまって……」
「学んではいるはずなのに、行動が変わらないんです」
この悩みは、決して珍しいものではありません。
むしろ、多くの会社で起きています。
なぜ、この問題は起きるのか
私は、この問題は社員の学ぶ姿勢が足りないからでも、研修内容が悪いからでもないと考えています。
本当の原因は、もっと別のところにあります。
それは、研修を“知識を入れる場”として使っていて、“行動が変わる仕組み”につながっていないことです。
人は、知識を得ただけでは変わりません。
人は「知っている」だけでは変わらない
これは、少し考えれば当たり前のことです。
・ダイエットの知識があっても痩せない。
・睡眠の大切さを知っていても夜更かしをする。
・運動が必要だと分かっていても、続かない。
人は「知っている」だけでは変わらないのです。
会社でも同じです。コミュニケーション研修を受けたからといって、翌日から職場の空気が変わるわけではありません。
リーダーシップ研修を受けたからといって、部下への関わり方が自然に変わるわけでもありません。
現場が研修を打ち消している
では、何が必要なのか。
それは、学んだことを日常で使わざるを得ない環境です。
たとえば、「相手の話をよく聴きましょう」という研修をしたとします。
内容そのものは正しい。
けれども、現場に戻れば、上司は忙しく、会議は短く、結論だけを急ぎ、部下の話を途中で遮る。
評価も売上と結果が中心。
こういう環境では、「聴くことが大事です」と言われても、定着しません。
なぜなら、その職場では“聴くこと”が機能する前提になっていないからです。
もっと言えば、研修後の現場が、研修内容を打ち消してしまっているのです。
見落とされている「組織の構造」
ここで多くの会社が見落としているのが、組織の構造です。
人を変えようとする前に、まず見るべきは構造です。
- 何が評価されているのか
- 何が日常会話として交わされているのか
- 上司はどのように部下に関わっているのか
- 挑戦したときに、認められるのか、責められるのか
- 会議では意見を言えるのか、それとも空気を読むしかないのか
こうした「日々の当たり前」が、組織をつくっています。
この構造が変わらないまま、
年に数回研修を実施しても、変化は一時的なものにとどまります。
その場で「良い話を聞いた」で終わるのです。
機能する組織に必要な「承認の文化」
ここで、もう一つ見落とされている要素があります。
それが「承認の文化」です。
たとえば、部下が今までと違う関わり方を試したとします。
意見を言ってみた。
上司に相談してみた。
会議で異論を出してみた。
そうした小さな行動の変化に対して、周囲がどう反応するかで、その後は決まります。
「そんなことより結果を出して」
「余計なことを言わなくていい」
「前例どおりでいい」
こうした反応が返ってくれば、人はもう動きません。
逆に、
「言ってくれてよかった」
「挑戦したこと自体が大事だ」
「そこに気づいたのは価値がある」
このように承認されれば、行動は続いていきます。
つまり、研修が機能するためには、学びを支える承認の文化が必要なのです。
ここで言う承認は、単なる「ほめる」ことではありません。
成果を出したから褒めるのではなく、存在や姿勢や挑戦を認めることです。
人は、できたから動くのではありません。
認められたから、安心して動けるのです。
私は、研修そのものを否定しているわけではありません。
むしろ、研修は必要です。
言葉をそろえ、視点をそろえ、組織として何を大切にするかを共有する場として、大きな価値があります。
ただし、それはあくまで「入口」です。
本当に問われるのは、そのあとです。
- 研修で出たことが会議で使われているか
- 上司が1on1で振り返っているか
- 行動基準として評価に入っているか
- 社長自身が日常の言葉で体現しているか
ここまでつながって初めて、研修は組織変革の起点になります。
結論:変えるべきは「人」ではない
研修をやっても変わらないのは、社員の意識が低いからではありません。
研修をやっても変わらないのは、学びが定着する構造になっていないからです。
研修の問題ではないのです。
本当の問題は、その学びを受け止める組織のつくり方にあります。
だからこそ、変えるべきは「人」より先に、「構造」なのです。
ここまで読んで
「なるほど」と感じたとしても、
それだけでは組織は変わりません。
多くの会社は、ここで止まります。
→ 考えて終わる
一方で、変わる会社は違います。
→ 小さくでも動き始める
まずは、今の状態を整理してみてください。
→ 「指示待ち組織 本当の原因診断」無料・匿名(約3分)
また、このテーマについては書籍でもまとめています。
「社員1人あたりの利益が伸びる組織の作り方」Amazon Kindle


