中小企業の経営者様からは、経営幹部育成──これが、中小企業にとって非常に大きなテーマだとおっしゃいます。
なぜなら、会社の成長、未来を左右するのは、経営者一人の力ではなく、共に経営の舵取りをする「経営幹部」だからです。
今回は、経営幹部教育に携わった経験から、幹部育成に必要不可欠な5つのポイントを、「経営理念と個人の人生理念を結びつける」という重要視点も交えてお伝えします。
1.経営者の視点を持たせる
幹部に求められる第一の素養は、現場の延長線ではなく、経営者と同じ視点で物事を見られる力です。
単に目の前の売上や案件を見るだけではなく、「会社全体の利益はどうか」「今後の市場環境はどう動くか」「この意思決定は5年後どう影響するか」といった長期視点を持つことが求められます。
これを育てるには、経営会議へのオブザーバー参加や、経営課題をテーマにした議論への巻き込み、実務に直結する経営幹部研修が効果的です。
「なぜ今この判断をするのか」を考えさせる場を意図的に作り、経営者の思考を体験させることが鍵になります。
2.数字で語る力を鍛える
どんなに熱意があっても、幹部には「感覚」だけで語らず、数字を根拠に経営を語れる力が必須です。
売上、粗利、固定費、キャッシュフローなど、経営を動かす基本指標を理解し、自分の領域だけでなく会社全体の数字を読む力が求められます。
また、数字は「見る」だけでなく、「考え、語る」ための道具です。
幹部候補には、KPI(成果目標+行動目標)を自分で設計し、数字と行動をつなぐトレーニングを積ませると効果的です。
数字で未来を設計できる幹部は、経営にとって大きな武器になります。
3.人を育てるリーダーに進化させる
経営幹部とは、単なるプレイヤーではなく、人を通じて組織成果を上げるリーダーでなければなりません。
ここで重要になるのが、単なる管理ではなく、「育成」という視点です。
結果だけで部下を評価するのではなく、その努力や姿勢、意図までも認めながら関わる。
また、1on1面談では答えを教えるのではなく、問いかけによって気づきを促し、自ら考えて動く力を引き出していく。
この育成スタイルへのシフトチェンジが、組織の自律性を育て、幹部自身のリーダーシップを高める道となります。
4.経営理念と経営幹部の人生理念を結びつける
そして、幹部育成において最も深く、かつ見落とされがちな要素が、「経営理念と人生理念を結びつけること」です。
会社の理念を単なるスローガンとして覚えるだけでは、本当の意味で組織を支えるリーダーにはなれません。
「自分はどう生きたいのか」「どんな価値を社会に提供したいのか」という個人の人生理念。
これと、会社の経営理念が心から重なったとき、幹部は理念に生き、理念を体現する存在へと変わります。
経営理念が“借り物”ではなく“自分の言葉”になった幹部は、いざというときにブレません。
また、周囲からも自然に信頼される存在になっていきます。
そのためには、「あなた自身の人生理念は何か」「会社の理念とどこが共鳴しているのか」を対話を通じて丁寧に言語化させることが不可欠です。
5.社長の孤独を理解し、参謀意識を持たせる
最後に忘れてはならないのが、社長の孤独を理解し、支え合える参謀意識を持たせることです。
経営者は常に孤独です。資金繰り、採用、人材育成、競争戦略──日々重い判断を一人で抱えています。
そんな中で、単なるイエスマンではなく、本気で意見を言い、建設的に支えてくれる幹部がいることは、何よりの力になります。
幹部候補には、早い段階から経営課題を共有し、リスクもチャンスも一緒に考える経験を積ませることが重要です。
経営に対する当事者意識を育て、社長の片腕としての覚悟を育んでいきます。
まとめ
経営幹部を育てるということは、単なるマネジメントスキルを教えることではありません。
それは、視座を高め、数字を読み、人を育て、理念と人生を重ね、経営者の孤独を共に支える存在を育むことです。
焦らず、着実に。あなたの会社を未来へつなぐ幹部たちを、今日から育てていきましょう。