少し前のことですが、ご支援先に複数の飲食店経営されている会社がありました。
このご支援先ではパートナーとして取り組み3年間で売上を3倍に伸ばしました。
売上が伸びれば忙しくなります。
そうなると、作業をしながらお客様に応対するスタッフも出てくるようになり、社長は危機感をもたれていました。
そして「社員間でレベルの差があるから、接客の研修をしてほしい」とのご依頼をいただきました。
この会社では既に何度も接客テクニックの研修はされていますので、同じことをやっても意味がありません。
さらに、私は接客のプロではありません。
今までの研修は、講義形式とロールプレイングで接客テクニックを学んできています。
ロールプレイングでは出来ても、現場で出来ないのは、テクニックの問題ではなく、社員・スタッフの仕事に対する意識の問題だろうと考えていました。
そこで、私は「教えない研修」をすることにしました。
教えない研修では、接客のテクニックは一切扱いません。
目的は、仕事に対する意識を上げることです。
受講者である社員が自ら考えることを主眼にし
「どうしたらお客様が喜んでくれる接客ができるか?」
これをテーマに、社員に考えてもらいました。
はじめから、大上段に構えすぎた質問だからでしょう、殆ど発言がありません。
これは不味いぞと思い「自分がされたら嫌な接客はどんな接客か?」に質問を変えました。
すると普段他の店でイヤな接客を受けたんでしょう。
ここぞとばかりに意見がたくさん出てきました。
これで、やってはいけない接客の共有認識ができます。
ダメなものがわかると、いい接客も考えやすくなります。
場の雰囲気が暖まったところで、「どうしたらお客様に喜んで頂けるか?」を改めて全員に意見を聞きました。
ここからはいろんな接客のアイデアが出てきました。
非常に活発な発言があって、本音で話し合いができたんです。
これにはオブザーバーで参加していた社長も「こんなに店のことを考えてくれていたんだ。意識は高かったんだ」と感激をしたくらいです。
これで、この会社の接客のレベルが一気にアップしました。
この研修では、自分の意見が会社に聞いてもらえた、会社に貢献できた、自分は会社や周りの人の役に立っていると、参加した社員は感じていました。
この会社に自分は必要とされているという自己有用感もアップし、仕事に対する意識も、モチベーションも上がりました。
会社や仲間に期待をされたり、認められたりすると、仕事に誇りをもて、断然やる気になるものです。
役割があって、居場所があるのは幸せな事なのです。
これで、仕事に対する考え方も変わりました。
自分たちが考えたことですから、お客様に喜んでもらえるような接客を全員がするようになりました。
お客様からの評判は非常によくなり、売上も当然前年対比で115%伸びました。
教えない研修を、仕事に直結する内容で開催することで、自ら考え、行動する、仲間同士で育てあう自走する組織、自律型組織が出来上がっていきます。