社長は基本的に仕事が好きです。好きでなくてもやらざるを得ない立場にあり、休みの日でも仕事の事を考えています。

では、社員の方々はどうでしょう?

仕事が好きな社員や休みの日にまで仕事のことを考えている社員は決して多くはないはずです。

経営理念とビジョンの共有と社員の意識の差

会社の経営理念、将来のビジョンは、社長の想いや実現したい内容が入っています。

そして、経営理念を実現するためにビジョンを達成することは、社長にとって価値があり、困難があったとしても成し遂げようと一生懸命に努力をすることができます。

では、社員は経営理念、ビジョンを心から達成したいと思っているでしょうか?

社員は、経営理念やビジョンの作成には携わっていません。

そのため社長は、経営理念やビジョンを社員に理解させる必要があると考えます。

経営理念を述べるだけでは、社員には理解・浸透できません。

社員が経営理念を理解し共感、そして共有するためには、会議やミーティング、朝礼などで社長が経営理念やビジョンのできた主旨などをストーリーとして語り掛けることも必要です。

どんなに立派な言葉より、この経営理念の根底に流れる思いを伝えることこそが、社員が共感し、理解を促します。

経営理念やビジョンをストーリーとともに語れば社長の思いは伝わりやすくなります。

ただ、聞き手でいるだけでは、まだ受け身です。

もっと深く理解するには、社員が自分のこととして捉えることが必要になります。

そのために、経営理念やビジョンを社員一人ひとりが考える機会を設けることもいい方法です。

経営理念をベースとして働く社員一人ひとりが会社に誇りを感じ、やりがいを持って働ける会社にするために、全社的なミーティングを行い、社員一人ひとりが会社に対しての思いや今後どのようにしていきたいかなどを考えて意見交換をします。

その結果、会社や経営理念、ビジョンに対する理解が深まり、会社に対する姿勢や仕事に対する取り組み方も変わっていきました。

これらの方法も非常に効果があります。 しかし、「経営理念やビジョン達成のために働いているわけではない。自分のために働いているし、お金のために働いているから経営理念なんて関係ないや」と思っている社員がいることも確かです。

社員が働く目的と人生理念

働く目的は人それぞれです。中には「家から近いから応募した」「給料がよかったから応募した」このような社員もいます。

それは、表面的な事であって、働く目的を真剣に考えていなかったからです。表面的ではなく、真剣に仕事をする真の目的を考えるための研修があります。

それは社員の人生理念を考える研修でもあり、誰に強制されたわけでも、報酬があるわけでもないのに一生懸命に取り組んだことを社員に考えてもらいます。

ある会社の研修では、一人の社員のエピソードが参考になります。

彼は高校時代、野球部でした。野球部と言っても甲子園常連校ではなく、ごく普通の公立高校の野球部です。
「できたら甲子園に出場したい」と思っていたものの今の野球部のレベルでは無理なことはわかっていました。
にもかかわらず、彼は泥まみれになって練習に励んでいたのです。そして、とても充実をしていたと振り返っています。

「ハードな練習をしても、甲子園には行けないことはわかっていましたが、チームが一つになって、強いチームに一泡吹かせたいと思っていました。きっと壁が高いほど燃えるんだと思います」と彼は考えました。

彼が夢中で一生懸命に努力できることは「チームで目標に向かってチャレンジすること」であり、これが彼の人生理念であることがわかります。

経営理念と社員の人生理念を合わせる

経営理念に「挑戦」「チャレンジ」「創造」などの文言があれば、彼の人生理念と経営理念の合致点を見いだすことができます。

彼の人生理念から考えると、新規事業の開発や難しい課題を仲間と共に解決していく等の業務には最適です。

会社の経営理念と社員の人生理念の共通点を見いだすことができれば、社員が仕事をする目的も、仕事をすることが自分の人生を豊かにできることもわかります。

社員一人ひとりの人生理念を知ることで、経営理念との共通点を見つけ出すことは可能です。

共通点に気付けば、会社の経営理念やビジョンを達成することが、自分のためにもなることが理解でき、仕事に対する考え方や熱意も良い方向に変わっていきます。

そして、人生理念と経営理念の一部が合っていれば、たとえ困難があったとしても成し遂げようと一生懸命に努力をすることができます。

これが本当の意味での、経営理念を理解することになるのです。