どんなに素晴らしい経営戦略があっても、実行されなければ絵に描いた餅になってしまいます。
経営戦略を実行するためには、財務、営業拠点、工場施設、商品・サービス、顧客、マーケティング、人材、組織、ITなどの機能別戦略や戦術が具体化され、機能することが必要です。
そのための強力なツールが戦略マップです。
戦略マップのメリット
「戦略マップ」は、経営理念、ビジョン、経営戦略と機能別戦略の関連や因果関係を一覧でわかりやすく1枚の用紙にまとめた表です。
経営戦略と機能別戦略を1枚にまとめていますので、ぱっと見ただけで各戦略の関連性がわかります。
また、会議やミーティングにも持っていくことができ、常にビジョンを確認しながら、経営戦略を達成するための行動がとれるのです。
また、「戦略マップ」は、社長の頭の中を見える化したツールでもあります。社長が経営戦略を考えた際の思考を一つの表にまとめたものです。
そのため、社長が社員に説明する時にも会社の目指す方向とやるべきこととの関連性がわかるため、会社にとっても社員にとっても、未来がイメージしやすくなり、ワクワクできます。
戦略マップの目的と機能
機能別戦略を、あまりにも細分化してしまうとかえってわかりづらくなってしまいます。
脳科学的には、人間が1回聞いて覚えられる最大の桁数は平均7桁だといいます。だから、携帯電話が普及する前は市内局番を含めて7桁にしていたそうです。そのほかにも一般的な大人が同時に記憶できる情報の数は7個までといわれています。
そのため、戦略マップでは機能別戦略を「財務」「商品・サービス」「顧客」「業務」「組織・人材」の機能別戦略を5つに分けて考えることにします。
1.財務戦略
経営理念やビジョンを達成するためには、売上・利益は必要です。また、財務を健全にしていくことも欠かせません。財務戦略では、売上・利益目標や投資・借入、大きな資産の購入や売却などを書き入れます。
2.商品・サービス戦略
売上・利益目標を達成し、財務戦略を成功させるためには、ターゲットとなるお客様が満足または感動する製品・商品・サービスを提供することが絶対条件です。商品・サービス戦略では、商品構成、技術・サービス内容、現状商品・サービスのブラッシュアップや新商品・サービスの開発を考えます。
3.顧客戦略
ターゲットとするお客様を明確にします。 その上で、新規顧客を増やし、既存顧客に何度も利用してもらうためのマーケティング戦略を考えます。
4.業務戦略(オペレーション戦略)
商品・サービス戦略や顧客戦略を可能にするためには、オペレーションや業務を整える必要があります。またDXを活用するならどのようにすべきか、など社内のオペレーションや業務などの仕組み作りについて考えます。
5.組織・人材戦略
業務やオペレーションを機能させるためには、どのような組織体制にするのか、また採用や人材教育、評価方法はどうあるべきかを、考えます。
戦略マップの考え方
戦略マップを見ると、財務戦略を達成するためには、商品・サービス戦略と顧客戦略が機能することが必要です。そのためには社内のオペレーションや業務を的確に運営することが要になります。
業務を的確に運営するためには、組織体制を整え、必要な人材を採用し教育することが欠かせないことがわかります。
経営戦略を策定する時には、上のようなブレークダウンの流れですが、戦略を実行するときには策定とは逆の流れ、ボトムアップになります。
あるべき組織体制を整えて、必要な人材を採用し教育すれば、業務を的確に運営することができます。
業務が的確に運営できれば、顧客が増え、顧客に喜んでもらえる製品・商品・サービスが提供できるようになります。
その結果、売上・利益目標も達成でき、ビジョンを実現することが出来るという流れです。
戦略マップは、それぞれの機能別戦略の策定をする際にも、実行をする際にも、戦略の関連性がわかります。そのため、社員が行っている業務がビジョンを達成するための何に貢献しているのかが理解でき、モチベーションも上がり、経営戦略(全体戦略)がぶれることもありません。
戦略マップを共有して実行力を高める
戦略マップは、社長お一人で、または経営幹部とともに策定をします。
社長と経営幹部がともに作っていれば、経営幹部の知見も織り込まれた戦略マップが出来上がります。
もうひとつ、とても大切なことがあります。
経営理念、ビジョン、経営戦略、戦略マップは、社長や経営幹部だけが知っていても、実行は出来ません。
社員がこれらを理解、共感、共有してはじめて経営戦略が実行できるのです。
まとめ
経営理念やビジョン・経営戦略を策定する際に考えたことは、機能別戦略を作るときにも大いに参考になります。また、そのまま機能別戦略になることもあります。
戦略マップを策定するときには、経営理念やビジョン・経営戦略を考えたときの記録を見直すことが大切です。現状の問題点も大きなヒントを与えてくれます。問題点を裏返せば戦略が見えてきます。
戦略マップは、経営戦略を機能別戦略に細分化し、なすべきことを明確にして、それぞれの業務が経営戦略達成のためであることが全社員が理解できる重要なツールです。