2023年に早々とセ・リーグ優勝をした阪神タイガースと大差を付けられて最下位に沈む中日ドラゴンズ。優勝という目的は同じでも、結果は大きく違っています。
両チームのチーム力、監督がチームに与える影響について考えていくことは、今後の経営にとって有益な示唆を与えるでしょう。

フォアボールと三振、ダブルプレー

阪神 岡田監督

阪神岡田監督は、「フォアボールはヒットと一緒」と選手に伝え、球団に掛け合って年俸の査定ポイントを上げました。

また、相手投手によっては低めのフォークボールは振らないように「見逃し三振OK」と伝えています。

監督がこのような指示を出してくれれば、バッターは相手の配球を考えて、ボールを見極められます。

ある試合後のインタビューで岡田監督は「大事なところでボール球を振らない雰囲気で、ベンチの選手もボールを見極めた時がいちばん喜んでいる」と答えたことこそ、ボール球を見極める意識がチームに大きく浸透したことがわかります。

相手ピッチャーからしたら、ヒット以上にフォアボールを嫌がります。

四球がでれば、盗塁、バント、犠牲フライと続けばノーヒットで得点が入り、四球で相手投手がリズムを崩せば、大量失点ということも起きます。

また、岡田監督は後続の打者に打ちやすい状況を作ることの重要性を強調しています。

「一つ例を出すと、無死一、二塁で“打て”のサインになったら、ゲッツーでもええんや」
「2死三塁。次の打者は物凄い打ちやすいんよ。それが“打て”と言うとんのに、右打ちするような変な打ち方でポップフライになって1死一、二塁になったら、次の打者は打ちづらいで。2死三塁なら(凡退でも)何の罪もない。ゲッツーにもならんしな(笑い)。そういうこと」
と、プレッシャーを感じさせずにバッターを打席に立たせることを考えています。

さらに、「進めてほしいならバントとかサインを出すわけやから」と述べ、状況に応じて選手を指導しています。

中日 立浪監督

中日立浪監督は「見送り三振は駄目ですよね。バット持っているんだからね」と語っています。

こう言われると選手は、追い込まれれば少々ボールでも振ってしまいます。

三振を恐れるために、初球から打って凡打の山を築くことも多くなります。

プレッシャーが掛かる中で打席に立てば、身体は硬くなって、凡打が増えます。

凡打が増えれば、打率が落ちます。打率を落とせば調子を崩すこともあり、ますます打てなくなって得点力は落ちます。

完全な悪循環に陥ってしまいます。

相手ピッチャーは楽です。追い込んだ後、低めのボール玉を投げておけば、空振り三振を誘いやすくなりますから、気持ち的にも楽に投げられます。

本来なら優秀な中日投手陣が10敗カルテットになってしまうのは、中日に得点力がないことが原因です。

7回2失点で負け投手になってしまいますから、得点を取られないようにとプレッシャーを感じて投げているように感じています。

そのため、身体に余計な力が入ってしまい、甘いコースに投げてはいけないと意識すればするほど、甘いコースに投げてしまいます。

クオリティスタートといわれる6イニング3自責点まで相手に許しても良いと考えて投げるのと、0点に抑えなければならないというのではプレッシャーが違います。

落合前中日監督

中日の黄金時代を築いた落合前監督も「見逃し三振になってもいいから、低めのボール球は振るな」と指示を出していたため、フォアボールが増えていたのです。

優勝した年の中日のチーム打率、得点はリーグ5位でしたが、四球数は456と1位で、2023年に優勝した阪神と同じようなデータが出ています。

さらに、落合前監督も状況によってはゲッツーを認めています。 「無死満塁のチャンスで最初のバッターが三振すると、次のバッターに比重がかかり、ゲッツーでその回0点になることもある。

ノーアウト満塁、ゲッツーで1点。その1点はお前のプラスとして評価してやるよって。それはちゃんと査定の人にも言ってある」と語っていました。

選手(部下)の個性を把握する

阪神岡田監督は、御年65才でバリバリの昭和生まれです。
学生時代の運動部では全体主義的で、精神論が中心で、「練習中は水を飲むな」のスパルタ世代にあたります。

しかし、岡田監督はこう言います。
「選手それぞれの個性に合わせて、言葉の選び方や接し方を変えなアカン。
反骨心を利用したほうがいいやつもおるし、逆もまたしかり。指導者の側も人間的な引き出しを増やさないといけないというのはあるわな」と
選手一人ひとりを理解し、引き出す方法を模索しています。

その結果、選手は自分らしいプレースタイルを見つけやすくなりました。

これは監督が選手一人ひとりの個性を観ていなければ、出来ないことです。

中日立浪監督は、9月18日の根尾投手が初めて先発した試合後のインタビューに
「根尾は全くどのくらいいけるか、今年試合を見るの初めてでしたからイメージ沸かなかったです」と答えています。

根尾選手を野手から投手に起用法を変えたのは、誰あろう立浪監督です。

その監督が初めて試合を観たといわれたら、根尾投手はどう思うでしょうか?

選手のことを観ていない把握していない監督は、選手から信頼をえられるのでしょうか?

監督(リーダー)が選手(部下)に与える影響

立浪監督は、2022年キャンプ初日に「ヘラヘラ笑いながらやっている選手は外すよ」とあいさつしました。

ある試合では、中日の選手が同点本塁打を放ったにもかかわらず、ベンチの面々がしらけた表情、姿を見せる場面があったのです。

さらに、立浪監督は、「やる気」を出す選手が好きなようです。
そのため、京田選手や阿部選手のような主力であっても、「やる気」が表に出にくい選手が好きになれなかったのではないかともいわれます。

客観的なデータではなく好き嫌いで選手を評価したり、試合中にキレてゴミ箱を蹴ったり、選手に対する白米の提供を禁じたりしたことなど、徹底した統制というよりも恐怖政治を行ったことで選手がガチガチにプレッシャーを感じ、持っている能力の半分も出してないように感じてしまいます。

まとめ

監督であるリーダーは、個人的な好き嫌いではなく、選手や部下を客観的に判断して、一人ひとりの個性をみて能力が伸びる環境を作っていくことが重要な仕事です。

できないことを指摘するのではなく、できたところを評価して伸ばしていくことで、チーム力や結果も自ずとついてきます。

リーダーでチーム・組織は変わります