「火事場の馬鹿力」という言葉があります。
ご存じのように、火事や災害などの非常事態が起きたときに、普段は出せないようなもの凄いパワーを出すことです。
人間は常に100%の力を出してしまうと、筋肉や神経系に過大な力が掛かって自分自身がボロボロになってしまいます。
そこで普段は、リミーターを掛けて発揮できるパワーに制限を掛けています。
では、社員の方々は仕事で能力の100%を発揮できているでしょうか?
「どんなに頑張っても給料は同じだからな」「成果を上げても評価はしてもらえないから」など、能力が高くても、自分自身で強力なリミッターを掛けている場合もあります。
「指示された仕事しかやらせてもらえない」「自分の意見は否定されてしまう」など、上司などの他者から強力なリミッターを掛けられて、能力の半分も出しきれていない社員の方もいるでしょう。
リミーターが掛かっていても、掛けられていても、仕事の成果は上がりません。
仕事での達成感もなければ、イキイキと働くことも、幸せに働くこともできません。給料を得るためだけに仕方なく働く不幸せな人生になってしまいます。
ではリミッターを外して、幸せに働くためにはどうしたらいいのでしょうか?
1冊の本「データの見えざる手」矢野和男(草思社文庫)を読んで、なるほどと思ったことがあります。
本の著者である日立製作所の矢野和男氏がウエラブルセンサーを社員につけて人間の「幸せ」を決める要素を科学的に明らかにしました。
人間の幸せは「共感」できたり「積極的に行動」できることが、人のハピネスの正体だ、と導き出しています。
採用の場面でも、共感は非常に重要になっています。
どんなに優秀な人材でも、企業理念や企業文化・行動規範に共感できなければ、採用をしても退社する可能性が高いのです。
今いる社員が、リミッターを掛けずに、能力を発揮しているのは企業理念に共感しているからです。
ご支援先の会社でも、企業理念と社員の仕事の価値観を融合したことで、社員の企業理念に対する共感力がアップしました。
「自社の商品のよさをわかってもらうことが、お客様と世の中のためになり、それが自分にとってのやりがいでもある」と考えて仕事をした結果、営業成績は1.3~2.1倍になったのです。
企業理念に共感し、社員自身が自分のやるべき仕事を理解し、任されれば、自発的に働き出し、リミッターを掛けずに能力を発揮します。
ある教育機関の教員は、上司には批判的な立場をとっていた、どちらかといえば扱いにくい人材でした。
それでも、組織の理念である「一人ひとりの個性を伸ばし、社会で活躍できる人材に育てる」には共感をしており、学生に対しては熱心で、組織の中では最も高い成果を上げていました。
最近では、自社の利益最優先ではなく、SDGsに代表される「地球上の全員が幸せになる」価値観が支持を集めるようになってきました。
仕事をすることが、幸せに繋がることを意識する時代です。
心理学者のソーニャ・リュボミルスキー氏、ローラ・キング氏、エド・ディーナ氏らの研究によれば
「幸福感の高い従業員の生産性は平均で31%、売上は37%、創造性は3倍高い」といわれています。
社員の幸福度を上げることは、企業の業績向上にもつながっていきます。
幸福度を上げるために、労働環境を整備することも大切です。
幸せな社員を増やすために、労働環境以上に重要なのは、企業理念に共感し、自発的に積極的に行動できる「自律型組織」の仕組みを作りあげていくことです。