「いちいち指示をさせるな!」
「いちいち指示をさせるな!」
「何度も同じことを伝えているよね。」
社員に対して、そんな言葉を口にしたことはありませんか。
任せたいと思っているのに、少し判断に迷うとすぐに社長のところへ相談に来る。
結局、自分で考えず、指示を待っているように見えてしまう。
その結果、社長は毎日、小さな判断に追われ、本来取り組むべき経営の仕事に時間を使えなくなってしまいます。
しかし、本当に社員は考えていないのでしょうか。
私はそうは思いません。
社員が動けない原因は能力ではなく、会社としての判断基準が共有されていないことにある場合が多いのです。
判断基準が曖昧だと、善意が会社を傷つける
殆どの社員は会社に貢献したいと思っています。
だからこそ、判断基準が曖昧だと、「会社のため」の行動が、かえって会社に損失を与えてしまうことがあります。
例えば、決算前。
売上目標を達成したい一心で、お客様にお願いをして商品を納品し、
「新しい期になったら返品していただいて構いません」と約束してしまう。
あるいは、売上を取りたいという思いから、会社に相談することなく値引きをして契約してしまう。
本人は悪気があってやっているわけではありません。
むしろ会社に貢献したい、責任を果たしたい、そんな思いで行動しています。
しかし、それは結果的に利益を減らし、お客様との信頼を損ない、会社全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
問題は社員ではありません。
「売上より利益を優先する」
「目先の数字より信頼を大切にする」といった判断基準が共有されていないことが問題なのです。
判断基準は会社の文化になる
前回のコラムでは、「理念を語り続けること」の大切さを書きました。
理念は会社の存在意義や目指す方向を示してくれます。
しかし、理念だけでは社員は判断できません。
理念を現場で生かすためには、「この会社ならどう考えるか」という判断基準が必要です。
そして、その判断基準は、1枚の紙に書かれたルールだけではありません。
会社が目指すビジョン。
社員に期待する行動指針。
社長や経営幹部が日々どのような判断をしているのか。
さらに、どのような行動を評価するのかという評価制度。
そして、会議でどのような議論が行われているのか。
社員は、それらすべてから「この会社は何を大切にしているのか」を学んでいます。
例えば、売上だけを評価する会社では、社員は売上を最優先に判断するようになります。
反対に、お客様満足や利益、チームへの貢献まで評価する会社では、それらを大切にした行動が増えていきます。
会議も同じです。
社長だけが結論を出す会議では、「最後は社長が決める」という文化になります。
一方、「あなたはどう考える?」と問いかける会議では、自分で考える文化が育ちます。
つまり、判断基準は理念だけでつくられるものではありません。
理念、ビジョン、行動指針、評価制度、会議の進め方、そして社長や経営幹部の日々の言動。
そのすべてが積み重なって、会社の判断基準になっていくのです。
社長は答えではなく、考え方を伝える
伸びる会社の社長は、答えだけを教えません。
「なぜ、その判断をしたのか。」
その理由を社員に伝えています。
「今回は利益よりも、お客様との信頼を優先した。」
「今回は短期的な売上よりも、長くお付き合いできる関係を選んだ。」
「品質だけは絶対に妥協しない。」
こうした判断の背景を繰り返し伝えることで、社員は会社の価値観を理解し、自分でも判断できるようになります。
社長の頭の中にある考え方が、少しずつ会社全体の共通言語になっていくのです。
判断基準は、対話の中で育つ
判断基準は、一度説明しただけでは浸透しません。
会議や朝礼、日々の打ち合わせの中で、
「あなたならどう判断する?」
「なぜそう考えたの?」
そんな問い掛けを繰り返すことが大切です。
社員が自分の考えを話し、それに対して社長が判断の理由を伝える。
この積み重ねによって、会社としての判断基準が少しずつ共有されていきます。
そして、社員は「社長ならどう考えるか」ではなく、「会社として何を大切にするか」を基準に判断できるようになるのです。
社長がいなくても動く会社へ
社員に任せるとは、放任することではありません。
会社としての判断基準を共有したうえで任せることです。
社長がいなくても、一人ひとりが会社の価値観に沿って考え、行動し、判断できる。
そんな社員が増えるほど、社長は目の前の判断ではなく、未来を考える時間を持つことができます。
伸びる会社の社長は、判断基準を会社のあらゆる場面に落とし込み、社員が自ら考え、行動できる組織をつくっているのです。


