パーソルキャリアが2024年に行った調査によると、転職理由として「人間関係が悪い」(22.7%)、「社内の雰囲気が悪い」(21.1%)が上位に挙げられています。
これらは、最も多かった「待遇面の不満」に次いで多く、無視できない問題です。また、優秀な社員は将来に対する不安から転職を検討することも多いと言われています。
若者の人口が減り、人材採用が難しくなっています。
人を採用するのも大切ですが、さらに重要なのが、社員が退職するのを防ぎ、定着率をあげていくことです。
社員の定着率を上げていくことは、
1.採用費、教育費が抑えられ、コスト削減ができる
2.従業員の業務知識やスキルが蓄積され、生産性効率が向上します
3.長く一緒に働く仲間が増えることで、社員間の連携が強化され、チームワークが向上します
このようなメリットがあり、企業にとって定着率を上げていくのは重要な経営課題のひとつです。
退職者を防ぐには、人間関係の改善、社内の雰囲気の向上、そしてビジョンの明確化がカギになってきます。
1. 信頼と安心を生み出す「心理的安全性」の確保
あなたの会社は、社員が自由に意見を述べられ、失敗を恐れずに挑戦できるでしょうか?
意見を言っても無視される、バカにされる、無能だと思われる、頭ごなしに叱られる、これでは、意見を言うことを止めてしまいます。
「言ったところで何も変わらない」と思う組織であれば、従業員は口をつぐみます。


「指示されたことは出来て当たり前」と考え、「できなかった」ことについて追求をしていませんか?
出来なかったことを追求されれば、必ずといっていいほど自己防衛のために「言い訳」をしはじめます。決して問題解決にはいたりません。
どうしても人の「できなかったこと」「悪いところ」ばかりが気になってしまいます。悪いところを直せば良くなると考えがちですが、悪いところを直すのは大変です。
それよりも「できたこと」「良いところ」を見てあげれば、良いところをどんどん伸ばそうとします。良いところが伸びれば、悪いところもよくなっていきます。
大切なことは、話をよく聞いてあげること、否定しないことです。そして、承認によって相手を尊重することができれば、会社は良い方向に変わっていきます。
社員の意見や取り組みに対して「関心を向ける」「話しかける」「感謝する」「共感する」などポジティブなフィードバックを意識的に伝えることです。
積極的な挑戦による失敗は評価し、怠慢などによる失敗は認めず評価を下げることは当然です。
このような小さなことの積み重ねが信頼関係を築き、社員の安心感を生み出します。 結果として、社員同士の関係性が良くなり、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
2. オープンなコミュニケーション
社内の雰囲気が悪いと感じる原因の殆どは、コミュニケーション不足です。
中小企業の経営者は現場との距離が近いため、直接的なコミュニケーションが取りやすいという強みがあります。
定期的なフィードバックや評価面談を通じて、社員の声に耳を傾けることも大切です。
1回15分程度でも十分なので、社員の価値観や目標を共有し、意見を拾い上げ、改善に役立てることもできます。改善策がでたら実行し、その結果を共有することで社員の成功体験にもなり、信頼関係も強くなります。
社員間のコミュニケーションについても、お互いのがんばっているところ、良い点を認め合うことがとても効果があります。認め合っているからこそ、コミュニケーションがとれ、協力して仕事が進められるのです。
認め合うことができている会社の社員の方からは
「前向きなメッセージを伝えることが、よりよい人間関係の基本であることを再認識した」
「相手を認めるという小さな行動の積み重ねが、大きなものを動かすことがわかった。楽しく仕事ができるようになってきた」
などとおっしゃっています。

3.ビジョン・経営戦略と健康経営
ビジョン・経営戦略
優秀な社員は、会社の将来性に不安を抱いて退職してしまいます。
その原因は、会社がビジョンや経営戦略を社員に示していないからです。
社員がワクワクするようなビジョンを示して、ビジョンを達成するための経営戦略を示すことがとても重要です。
顧問先の会社では、年収1000万円の社員育成、残業時間を削減、全国展開などのビジョンをたてており、社員の離職率は「0」になりました。

健康経営
経営戦略のなかに、健康経営を取り入れることも有効です。
健康経営とは、社員の健康を企業の重要な資産と捉え、積極的に支援する経営手法です。
具体的には、健康診断の充実、メンタルヘルスケアの提供、健康促進プログラムとして、運動習慣をサポートする仕組み、ヘルスケアに関する情報提供を行ったりすることです。
社員の健康に配慮する姿勢は「この会社で働きたい」と思わせる大きな要因になります。
健康経営は定着力の向上だけでなく、採用力の向上にも寄与します。
「社員の健康を大事にする会社」という企業イメージは、求職者に対して魅力的に映ります。
特に近年の若い世代は、仕事と健康のバランスを重視する傾向が強く、健康経営の取り組みが優秀な人材の確保につながるのです。
さらに、健康経営優良法人の認定を取得することで、企業の社会的評価や信頼性も高まります。これは顧客や取引先に対するアピールとしても有効です。健康経営に真摯に取り組むことは、企業価値の向上にも直結します。
人を大切にする企業づくりのすすめ
社員が「ここで働きたい」と思える職場づくりは、業績向上にも直結します。
人間関係の改善と社内の雰囲気を整え、さらにビジョンを明確にし、健康経営による待遇改善を取り入れることで、優秀な人材の流出を防ぐことが可能です。
経営者として、社員一人ひとりを大切にし、安心して力を発揮できる環境を提供すること。それこそが、これからの企業成長の鍵となります。