「毎日同じような仕事をしていると熟練していく社員もいれば、惰性で仕事をする社員もいます。惰性で仕事をしていると生産性は高くはなりません。
そんな社員に仕事に対する意識を高める方法はないんでしょうか?」
こんなことをお尋ねいただくこともあります。
会社には創造性を求められる重要かつ高度な仕事もありますが、仕事の一部であることが多いのです。
大部分の仕事は、定型業務であるルーティンワークだといっても差し支えないでしょう。
そして、ルーティンワークの質を高めることが、会社の売上・利益に直結します。
誰がやっても同じような成果が出せるような仕事を、いかにイキイキとやってもらえるかが、仕事に対する意識を高めることにもなり、生産性も高めます。
だからといって、上司がいくら仕事に興味を持てと言い続けたところで、当の本人にその気がなければ右の耳から左の耳へ通り抜けていくだけです。
イタリアの化学メーカーの話ですが、作業員全員にゴーグルの着用を義務づけていました。
ところが、ゴーグルの着用率は高くなかったのです。
「上司が着用しろと命令するから、反発しているんだ」そんな意見もありました。
「作業員の意識の問題だから、研修を受けさせるべきだ」と上司は反発します。
こんなやりとりが続き、なかなか結論がでませんでした。
しかし、あることで着用率が一気にアップしたのです。
それは、ダサかったゴーグルのデザインを、洗練されたかっこいいデザインに変えたことです。
いくら上から指示命令しても、本人がいいと思わなければ着用率が上がりません。
本人が「これならいい」と納得したことで、ゴーグルを喜んで付けるようになったのです。
本人をその気にさせたこの事例は、ルーティンワークの生産性を高めるためにも応用できます。
そのポイントの一つが、ルーティンワークを改善し続けるための習慣を仕組み化することです。
具体例としては、トヨタのTQC活動がすぐに思い浮かびます。
TQCを簡単に言ってしまえば、作業現場で小さな集団を作り、より良い製品を作るにはどうしたらよいか、集団を構成するメンバーがお互いに意見を出しあって改善していくことです。
社員が意欲を持って提案したことが採用されればやる気も起きて、仕事に対して興味をもちます。
ご支援先の一つである飲食店では、週末にはスタッフが集まって、1つのテーマについて話合っています。
どうしたらお客様に喜んでいただけるか、集客できるか、などお店をよくするために意見交換が活発です。
はじめは業務命令だからと、いやいや参加していても、意見を求められ、その意見が褒められれば悪い気はしません。
自分の存在が認めてもらえれば、組織に対する帰属感も高まり、やる気もアップします。
さらに自分の意見が採用され、結果が出れば、積極的に仕事をするようになります。
ルーティンワークであっても、自分の意見が言え、意見が反映される組織であれば、イキイキと働くことが出来ます。
そんな環境を会社が作ることができれば、ルーティンワークの質も向上し、生産性も高まります。
そして従業員も気持ちよく働ける会社になっていくのです。