多くの中小企業の社長からは、社長だけが忙しい、指示待ち社員が多い、売上・利益が伸びて行かないなどのお悩みを伺っています。
これらを解決するためには、社長がいちいち指示をしなくても、社員一人ひとりが考えて行動する自律型社員を増やし、売上・利益を伸ばす仕組みとして「自律型組織」の実践的な作り方を10年以上の実績を踏まえて紹介します。
自律型組織とは
自律型組織の意義
社長をはじめ社員全員が目指したい会社のビジョン実現に向けて、全員のベクトルを合わせて、社員が自発的に行動し、相互に支援しながら組織力を高めて、売上・利益を伸ばし続ける組織をいいます。
また、社員各自が互いの能力を認め合う信頼関係があり、社員が社会や会社に貢献していることが実感でき自己有用感を感じられる組織が自律型組織です。
自律型組織にした結果
自律型組織を構築した企業では、次のような結果が出ています。
・1億円の赤字が、 2年で3.2億円の黒字へ営業損益4.2億円改善
・工場の生産性が19.7%アップ
・営業マンの個人別売上が、1.3~2.01倍になった工事会社
・飲食店では、売上高が3年で3.13倍!
などの実績が多数でています
自律型組織を阻害する4つの要因
社長と社員の視座の違い
社長は会社をどのように経営して発展させていくかを常に考えています。
世の中の動きや会社全体を見て、広い視野で未来から今を逆投影的に考えています。
ですから視点が非常に高いのです。
一方、社員の多くは自分が担当している現場的な視野で今までやってきた過去から現在を考えています。
なぜそうなってしまうかといえば、人間は保守的だからです。今やっていることを続ける方が楽なんです。
視座が低いため、今までと違った自律型組織をつくることには抵抗します。
社長のマンパワーに依存
中小企業では、経営戦略の策定から、営業、人事、現場の仕事など、全て社長がやってしまう会社もあります。社長がいないと業務が回って行かない会社も多いのです。
・社長がやった方が早くて正確だから
・部下に任せて失敗をするのが怖いから任せない、
・部下に任せても仕事の精度が低くイライラしてしまうから
このような理由から、自分でやってしまう社長もいます。
しかし、これでは自律型組織はできません。分業の仕組みを作って、部下に仕事を任せるからこそ、自律型組織が出来るのです。
社員教育が機能していない
社員を自発的に働くようにしようと、研修を実施したり、様々なマネジメント手法を使ったり、評価制度を導入したりされています。しかし、思うような成果が出ていません。
これらが上手くいかないのは、それぞれの良いところを取り入れようとするのですが、一貫性がないため、つぎはぎ的になってしまい効果が出ていないのです。
また、様々な取り組みや研修をしても、フォローをしていないため、時間と共に忘れてしまいます。
なかには、社長自身が研修を受けていないため、社員教育をしていない場合もあります。
売上・利益のみ追求する
自分さえよければいいと考えて、目先の売上に走ってしまえば、社員間の対立が起きます。また、売上を上げるために、上からの押し付けや命令が多くなり、パワハラも起きてしまいます。
こうなってしまうと、社員は考えることをやめ、受け身になって、仕事がつまらないと感じます。
これでは業績は伸びてはいきません。自律型組織はできません。
自律型組織が売上・利益と人材を伸ばせる5つの理由
会社の目的が明確になる
経営理念やビジョンを明確にするため、社員全員のベクトルが一致します。
ベクトルが合っていないと、各社員の持っている能力が分散してしまい成果が上がりません。
全員が同じ方向に努力をすれば、小さな力でも大きな力になります。
同じ目的をもってベクトルを合わせているから、多少の困難があっても乗り越えられ成果を上げていけるのです。
経営への参画意識が高まる
自分が担当する業務の情報だけでなく、経営戦略、経営計画、経営数値など社長と同じ情報を社員が共有するため経営への参画意識が高まります。
限られた情報しかなければ限られた思考しかできません。
しかし、経営者と同じ情報を持っていれば考える思考の幅が広がります。
思考の幅が広がるからこそ、社員一人ひとりが視野を広げて、自分で考えることができるようになるのです。
自分で考えて行動できる
指示された業務をこなすだけでは、やらされ感が強く、言われたことしかやらなくなり指示待ち社員を量産することになります。
経営理念やビジョンが明確で、ある程度の自由裁量があれば、社員は主体的に考えて、行動するようになります。
自分で考えて仕事をして、いい結果が出て、いい変化が起きれば、仕事は楽しくなります。
決して楽ではありませんが、仕事に喜びがあります。それが自律型人間を増やしていきます。
心理的安全性の高いチームができる
考えて仕事をする自律型組織では、経営幹部の知見だけでなく、社員の経験や知見を活用します。
そのため、会社に自分の意見を聞いてもらえ、自分の意見が会社に採用されれば、会社に貢献できたと社員は感じて、自己有用感がアップします。
さらに他の社員からも能力や努力を認めてもらえるため、社内の信頼関係が高まります。
信頼関係と自己有用感があってはじめて、心理的安全性の高いチームができあがります。
社長が経営に専念できる
自律型組織をつくることによって、社員に業務を任せられるようになり、社長は経営に専念できるようになります。
その結果、余裕をもって経営戦略を策定でき、経営理念の進捗状況を確認し、社内の状況を観察、分析、判断することができます。
また、社長は不測の事態にも対応することが可能になります。
自律型組織を作る8つのポイント
社長の想いのこもった経営理念
経営理念は、会社の活動の方向性を決めるものであり、社長や社員が仕事をする中での意思決定や行動をするときの判断基準となるものです。
もし、経営理念がなければ、会社の目的や方向性がわからず、新しいことに対して社員は消極的になります。
さらに、声の大きい社員が新しいことに否定的であれば、社員は誰に従っていいのかがわからなくなってしまい混乱をしてしまうだけです。
会社にはいろんな価値観をもった社員がいます。
価値観の異なった多くの人のベクトルを合わせて、同じ方向へと導くためにも経営理念は絶対に必要なのです。
経営理念は、社長が自らの想いを込めた人生理念をベースにして、自社独自の価値をお客様に提供し、自分達の仕事が世の中にどのように貢献できるかを経営理念に織り込んでいく必要があります。
ワクワクできるビジョン
「ビジョン」とは、経営理念に基づいて、会社が将来どうなっていたいのか、自社が目指す姿、理想の姿を具体的に描いた目標です。
ビジョンを考える際には、3~5年後に会社が、どうなっていたいかを具体的に思い描いて書き出します。
ビジョンといえば、売上や利益など数値的なことが真っ先に頭に浮かんでくる社長も多くいらっしゃいます。
経営理念を実現していくためにも、社員を幸せにするためにも、売上・利益は不可欠です。
ただ、売上や利益などの数値のビジョンだけでは、社員にはピンときません。
社員がビジョンを見たときに、「このビジョンのために頑張りたい」「なんかワクワクしてきた」と
具体的に会社の未来がイメージでき、自分事としてとらえることができるようなビジョンを作る必要があります。
そのために数値のビジョンだけでなく、状態のビジョンを考えていきます。
独自性のある経営戦略
ビジョンを実現するために必要なのが「経営戦略」です。
売上・利益目標を達成するためにも経営戦略は欠かせません。
経営戦略とは、自社の強みや提供価値、独自性を、どのような顧客に、どのような方法で提供していくのかを決定します。
そのために、現状分析をして、自社の提供価値、独自性を明確にすることは、経営戦略を考える上で非常に大切です。
経営をしていれば競合他社は必ず存在します。3C分析、VRIO分析、SWOT分析などの分析手法を使って、競合各店の動向、商圏や市場性、お客様のニーズなどを知った上で自社の強みを活かした経営戦略を策定する必要があります。
また、経営資源も限られていますから、適切に分配していくのも経営戦略で明示します。
社長の頭の中を見える化した戦略マップ
経営戦略(全体戦略)が決まれば、実行に移すために機能別戦略や戦術が必要になります。
機能別戦略は経営戦略を具体化するために、財務戦略、商品・サービス戦略、顧客戦略、マーケティング戦略、人材・組織戦略など部門や機能ごとに分けた戦略です。
ただ、機能別戦略がどんなに素晴らしくても、全体戦略や他の機能別戦略との関連がない場合には、ビジョンを達成するどころか、経営の足を引っ張ってしまうこともあります。
ビジョン、全体戦略と機能別戦略の関連性が一目で理解できるためにはツールが必要になります。そのツールが「戦略マップ」です。
「戦略マップ」は、経営理念、ビジョン、経営戦略と機能別戦略の関連や因果関係を一覧でわかりやすく1枚の用紙にまとめた表です。
経営理念から経営戦略と機能別戦略までを1枚にまとめていますので、ぱっと見ただけで各戦略の関連性がわかります。
会議やミーティングにも持っていくことができ、常にビジョンを確認しながら、経営戦略を達成するための行動がとれるのです。
「戦略マップ」は、社長の頭の中を見える化したツールでもあります。
社員に説明する時にも会社の目指す方向とやるべきこととの関連性がわかるため、会社にとっても社員にとってもワクワクする未来がイメージしやすくなります。
実行力のある経営計画
「せっかく経営計画を策定したのに、計画倒れに終わってしまった」といったことも聞きます。
計画倒れに終わってしまうのは、数字目標だけになっていたり、計画そのものが漠然とした内容になってしまっているからです。
数字だけの計画や計画の内容が曖昧であれば、どのように実行するかがわかりません。
経営計画の進捗度もチェックできません。これでは経営計画も絵に描いた餅になってしまいます。
実行可能で進捗管理もできる経営計画を作成するためには、戦略マップがとても役に立ちます。
戦略マップの良いところは、数字の目標だけではなく、経営戦略を実行するための機能別戦略が明示されていることです。
3~5年後のビジョンを想定して戦略マップが出来ていれば、戦略マップに記載した内容を文書としてまとめれば、立派な中期経営計画が完成します。
また、戦略マップから1年ごとにやるべきことを書き出してまとめれば、立派な単年度経営計画が出来上がります。
経営理念・ビジョンを社員との共有
自律型組織の肝は、社員が経営戦略、ビジョン、経営戦略、戦略マップ、経営計画を理解し、共有していることです。
会社の目的がわかっているからこそ、自ら考えて行動して、目標を達成することが出来るのです。
社員との共有なくして、自律型組織の構築はできません。
そのなかでも最も重要なのは、経営理念と社員の人生に対する価値観の一致する点を見つけることです。
「お金のために働いているから、経営理念なんて関係ないや」と思っている社員がいても不思議ではありません。
このように答える社員に人生に対する価値観がないかと言えば、決してそんなことはありません。今まで考えたことがなかっただけです。
人生の価値観と経営理念の一致点を見つけるための研修を行うと、自ら進んで一生懸命に取り組んだ経験との共通点が見つかることもあります。
共通点に気付けば、会社の経営理念やビジョンを達成することが、自分のためにもなることが理解でき、仕事に対する考え方や熱意も良い方向に変わっていきます。
経営理念やビジョンに対する理解が深まったら、それを維持し、定着させることを考えます。
それには、経営理念やビジョンを繰り返し伝える、話し合う機会を設けることが必要です。
考え行動するための部門別、個人別目標設定
自律型組織の核心は、社員一人ひとりが自ら考えて行動できるようになることです。
戦略マップに明示されている機能別戦略については、担当する部署が具体的な計画を策定します。
計画を考えるのは、部単位では部課長が中心になり、課ごとの計画は、課長と社員が作りあげます。
さらに、個人別で計画を策定して、自身のやるべきことを考えていきます。
そして、計画を実行し、検証して、計画を練り直し、PDCAを回していきます。課ごとで計画を考えるためチームとしての一体感が生まれます。
また、社員が担当したい仕事を任せて、自分で考えて行動できるようにします。社員は責任もやりがいもあって、お客様や会社に貢献している実感も持てるようになります。
自分たちで考え、行動したことが、お客様に貢献し、売上・利益も達成できれば、自信にもなり、社員が成長していき、素晴らしい会社になっていきます。
この積み重ねの結果が、自律型組織を作り上げていきます。
自律型組織の定着化する仕組みづくり
自律型組織を定着・継続していくためには、定期的に社員が経営理念やビジョンを理解し、経営計画を実行し、検証し、修正する流れを定着させるための仕組みをつくることが必要です。
経営理念・ビジョンの理解・浸透
朝礼やミーティング、会議その他の席において、経営理念やビジョンに込めた社長の想いや自社・自店の商品・サービスの強みや価値などを繰り返し伝えることで、経営理念・ビジョンを、社員がそらんじられるくらいに徹底します。
経営戦略・経営計画の報告会
経営計画に基づいて四半期または半期に行った業務の内容と結果報告を行います。
経営者はもちろんのこと、部門長は担当部門の実績と評価できる点と次の四半期または半期に向けた実行計画と目標数値を発表していきます。
1ON1ミーティング
社員一人ひとりの計画表にそって定期的に上長と社員で1ON1ミーティングを行います。
このときには、出来た点、良かった点を評価します。さらに、自分で設定した業務の進捗度を確認し、今後の目標を設定することが中心です。
経営数値の公開と収益構造の理解
数値を公表することで、社員にも会社の経営状況がわかります。数値が悪くなっていれば、その原因と今後の対策を、数値が改善できていれば、経営計画を実行することで、数値が改善できたと社員に発表をします。
今後も経営計画を実行していけば、売上・利益を伸ばせることが実感でき、社員は会社の未来に希望が持てるはずです。
まとめ
自律型組織とは、社員が自ら考え、行動し、結果を出し続けるチームです。その本質は「社員が主役になって会社の未来を創造する」ことです
そのために社長と同じ情報を持ち、仕組みと仕事と数字に対する意識を変えていきます。
自律型組織の仕組みを初めてつくるときには、社長が経営理念やビジョンを考え、経営幹部とともに経営戦略を考えます。この取り組みが社員に浸透しはじめたら、部下を信頼し任せることです。
そして経営幹部が主体になって会社を運営していきます。
自律型組織をスタートさせると、社員の発言や行動が少しずつ自発的になってきたなと感じるときもあります。何も変わってないなと不安になることもあります。
それでも、一進一退を繰り返しながら、少しずつ確実に会社は良くなっていきます。
そのめにも、なにより社長が自律型組織を作るんだという強い覚悟が必要です。
さらに詳しく自律型組織の作り方を知りたいと思われた社長は、定期的に開催している「自律型組織構築セミナー」にご参加ください。
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熱意を持って経営をされている社長には、ぜひとも自律型組織を作って、売上・利益と人材を伸ばしていただきたいと思います。